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新鮮食材ミールキットから自販機リサイクルの調剤薬品DX 社会問題解決スタートアップ8社

「スタートアップビジネスコンテストいしかわ2022」レポート

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男性要因の不妊解消を目指す生活習慣管理アプリSPERMANGYMを開発
Granate

 日本には不妊に悩むカップルが約600万人いるとされている。Granateの小寺氏も6年前に男性不妊に悩み、その解消のために文献等を調査し、生活習慣による精子の質の変化を調べるアプリを開発した。Granateはさらに機能拡張したアプリ「SPERMANGYM」を中心に、正しい知識と生活習慣の変化、パートナーとの関係円滑化をもたらすメンテックサービス(フェムテックの男性版)の開発・提供を目指している。

Granate 小寺 孝明氏

 男性不妊の治療には生活習慣の改善が重要とされているが、小寺氏自身が不妊に悩んだ経験から、それには3つのハードル1)自宅での精液検査の精度を上げることが難しい、2)長期間にわたるモチベーション維持が難しい、3)パートナーとの関係を円滑に保ち続けることが難しい、があることが分かった。SPERMANGYMはテクノロジーの力でこれらの課題解決に向けた機能実装に取り組んでいる。

 精液検査の精度については、生活習慣ログと精液検査結果データにより、精子の状態予測を行う機能を実装している。この精度を高めることにより、日々の生活の中で体重を測るのと同じように精子の状態を知ることができるようにする。また、モチベーションを維持するために、精子を鍛えて育てるという育成シミュレーションゲーム要素を取り込んでおり、日々の努力を視覚化するとともに、ランキングによって他の利用者と切磋琢磨できる機能も導入している。

 SPERMANGYMは主に男性が原因の不妊にターゲットを当てたアプリだが、不妊の解消には両性の協力が不可欠となる。SPERMANGYMでも女性の周期に合わせて目標日を設定し、カップルで精子の状態改善を目指す機能を取り入れている。さらにパートナーとの連携機能を用いることにより、女性の利用も想定している。

  生活習慣の記録や精子の状態予測などの基本機能は無料で、パートナーとの連携機能や保健師からの適切なフィードバックを受ける機能で収益を上げるとしている。ミールキット事業者と連携して精子に良いレシピを開発したり食生活のデータ入力を容易にすることで、初期導入のハードルを下げるとともに継続率を上げる戦略を立てている。

 行政や医療機関の連携も視野に入れており、来年春のクローズドβ開始に向けて開発を進めている。日本のみならず世界で多くのカップルが不妊に悩んでいる。SPERMANGYMはこの課題の解決に向けて、新たな視点で人類の明るい未来の実現を目指している。

匿名チャットアプリ「+ta」が従業員の悩みを24時間いつでも受け止める
株式会社メンヘラテクノロジー

 株式会社メンヘラテクノロジーは企業従業員のストレスケアを目的とした匿名チャットアプリ「+ta(プラスタ)」を開発している。業務上のストレスを抱えた従業員には、その負担に耐え切れず中間管理職を相手に爆発してしまう、といったことがある。これはコンプライアンス上の理由で動きに制約のある中間管理職側にも大きな負担となっており、その解消が求められていた。

株式会社メンヘラテクノロジー 代表取締役 高桑 蘭佳氏

 従業員の不満爆発には、気軽に安心して感情を吐き出せる場所がないことが大きな要因となっている。そこで+taは24時間いつでもリアルタイムチャットでサポーターが従業員の感情を受け止める。また、会社に解決して欲しいトラブルを抱えた従業員に対しては、希望した場合のみ、+ta経由で匿名の相談を企業に送るトスアップ機能も提供されている。会社側には管理職が把握しづらい課題の発見・解決が期待できる。

 メンヘラテクノロジーでは以前からC向けに悩み相談チャットサービスを展開していた。既に登録ユーザーは1.8万人、悩みを聞く「せんぱい」は900人に達している。+taで従業員の悩みを聞くサポーターは、通過率20%以下の選考を通過し、かつC向けサービスでの活動で一定の評価・実績がある人のみを採用することで、従業員からの信頼獲得の確度を高めることを狙っている。また、従業員自身の個人情報を登録することなく利用できるということも、会社への情報遺漏を恐れる従業員の安心感を高める仕様となっている。

 既に大手企業での実証実験も実施しており、通常は利用率が数%程度の相談窓口に対して、+taは対象者の半数程度が利用していた。評価も非常に高いが、具体的な解決策以外の「状況を整理してくれた」「背中を押してくれた」「褒めてくれた」などの観点によるところが大きかった。このことはC向けのサービスと共通している。

 メンヘラテクノロジーは、本サービスの初期ターゲットをコミュニケーション不足によってストレスを抱えやすいルーティンワーカーを多く抱えている企業に置いている。石川県は労働人口の80%がルーティンワーカーと言われており、まず石川県でのサービスインを目指している。チャット機能の分析と機能拡充の後、全国への展開を進めるとともに蓄積した相談データを元にBtoBtoCモデルへの拡張を計画している。

調剤薬品の受け渡しをDX化する
株式会社喜こころ

 現在は調剤薬品の販売に際して薬剤師による対面での服薬指導、受け渡しが求められているが、2023年に電子処方箋の利用が開始され、アマゾンによる処方薬の配達サービスが実施されることになっている。その際には宅配ボックスの利用も期待されているが、現時点では処方薬の受け渡しへのスマートロッカーの利用を認めていない。

 株式会社喜こころはスマートフォン、QRコード、顔認証システムなどを利用することにより、保健所によるスマートロッカー利用のための指摘事項をすべてクリアした処方薬受け渡しボックス「D.BOX」を開発した。既に金沢保健所および東京都の大田区保健所からは屋外設置の許可を取得している。なお、一連のシステムは特許出願済みとなっている。

株式会社喜こころ 代表取締役 中川 宏氏

 D.BOXは筐体に中古自動販売機を再利用するため、既に自動販売機メーカーおよびメンテナンス事業者、ならびに全国自動販売機協同組合との連携を実現している。2022年10月の次世代薬局EXPO東京にも出展しており、全国チェーンの調剤薬局と2023年からの導入商談を開始している。また、現在は調剤薬局の敷地内に設置することを想定しているが、薬局敷地外への設置や、病院、診療所、ドラッグストアでの設置なども進めていきたいとしている。

 D.BOXのスキームは調査医薬品だけでなく一般の物品でも利用可能であり、さらに大きな市場獲得が期待できる。それも含めたD.BOXの製造キャパシティ拡大について、喜こころはメーカーと協議を進めている。非接触・非対面で必要な物品を24時間受け渡し可能にするD.BOXによって、エンドユーザーの利便性だけでなく、人材不足解消や働き方改革を含めた社会課題の解決を喜こころは目指している。

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