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富士ゼロックスで培った0→1の価値創造、特許戦略のノウハウを実践で社会に還元する

大企業スピンアウトからブレインテック/ニューロテックを牽引するユニコーンを目指すCyberneX

連載
研究開発型イノベーション創出のケーススタディ

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イノベーションを起こす知財は10年前に出願されている

 富士ゼロックスで2016年から取り組んでいた脳研究の成果を事業化するために、馬場氏らのチームが独立する形でCyberneXを創業。その際に90件以上の特許を買い取っている。

 「知財は10年構想で2017年から2020年にかけて10年先に使われる知財を戦略的に出願しました。今の事業に一部は使い始めていますが、まだこれから。我々は将来的にこの事業への参入が想定されるGAFAなどの巨大IT企業が主要のターゲット。同じように脳波を測っているスタートアップは、共にブレインテックを切磋琢磨しながら開拓し、健全に競い合う仲間でもあります。巨大IT企業が脳情報を使ってビジネスを始めたときに、我々が彼らと対等以上に戦えるために、ビジネスをする権利として知財を保有しておく必要があります」

 特許への投資は、短期的な利益につながらないが、莫大な資力を持つ海外企業と勝負するには知財は必須だ。

 「大きなイノベーションを起こした発明が何年前に出願されたのかを分析したら、10年前に出されているものが大粒の特許になっていることがわかったのです。発明は、今使っているもの、今コアになっているものだけではなく、この先の未来に使われるであろう、世界観に対して作っていかないといけない。Ear Brain Interfaceに関する知財は我々が所有している知財のうちの1~2割程度です。我々は脳だけに限らない生体情報全般で出願しています」

 しかし、大企業は簡単には保有知財を手放してはくれない。馬場氏は、富士ゼロックスの社長に直接交渉したそうだ。

 「『私が退職したあと、この知財はどうするんですか?』とたずねたところ、『無用なので使わない』とのことでしたので、『それでは私に売ってください』と。意思決定が明確にされたのがポイントです。CyberneXをスピンアウトのモデルケースにしていきたい。知財を大企業が使わないのであれば、譲渡するスキームを作ることが大事。使わないのに保有だけしておくのはムダ。出して活用するか、もし知財に可能性があると考えるのであれば出資する、という形を整えることが日本の大企業の当たり前になるといいと思っています」

 知財譲渡の契約は内田鮫島法律事務所の鮫島 正洋氏が支援し、現在は技術法務担当顧問弁護士として参画している。メインVCである三井住友海上キャピタルも鮫島氏からの紹介だ。

 この知財をスピンアウトするノウハウを広げるため、馬場氏はCyberneXと同時に株式会社Agama-Xを創業している。Agama-Xは馬場氏が富士ゼロックスで手掛けていた新しい価値創造の取り組みを社会に還元することを事業目的に設立した会社だ。

 「Agama-Xで私が実践してきたイノベーションスキームや知財戦略のノウハウを社会に還元して日本の企業を強くする。その実績事例としてユニコーンを目指すのがCyberneXです。この起業構想はスピンアウトするときに設計しました。これも賛否両論でしたが、この構想でなければ、自分がやっていきたい社会貢献はできないと確信していたので、周囲からなんと言われようとこの形での起業を貫き通しました」と馬場氏。

Agama-XとCyberneXの2社を同時創業

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