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温度制御でかゆみ解消、透明太陽光発電など 期待のベンチャー発先端素材

第50回NEDOピッチ「先端マテリアル ver.」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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赤外光を発電に活用し、透明ガラスの太陽電池で街を森に変える

株式会社OPTMASS

 株式会社OPTMASSは、従来の太陽電池などで利用されていなかった赤外光(熱線)のエネルギー資源化を目指して透明なガラス状の太陽電池の開発を進めている。

株式会社OPTMASS 取締役 坂本 雅典氏

 赤外光は太陽光の約半分を占めているにもかかわらずエネルギー資源として利用されておらず、これを資源化できると非常にボリュームの大きいエネルギー資源を獲得することができる。また、赤外光は地球温暖化の原因とも言われており、その利用は地球温暖化の原因を除去することにもつながる。そして不可視光であるという点も多様な用途を開発するうえで大きな長所となる。

 OPTMASSは太陽光のうち赤外光に対する強い吸収能力を持ち、可視光をほとんど透過するという特徴を持つナノ粒子を開発し、これをガラスにコーティングした太陽電池の開発を進めている。例えば大阪の高層ビルあべのハルカスの窓ガラスの総面積はメガソーラー3~4基分に相当するため、窓ガラスをすべてこの太陽電池に置き換えると大きな発電能力を得ることができる。さらに日本全国には約16億平方メートルの窓ガラスがあるとされており、これをすべて同社の太陽電池に置き換えると、およそ年間2200万トンに相当するCO2を削減することが可能となる。

 このような透明な太陽電池は国内外で激烈な開発競争が繰り広げられている。しかしそれらはすべて有機材料を使用しているため、安定性や耐久性に問題がある。OPTMASSのナノ粒子は無機材料なので安定性も高く、窓ガラスに求められる数十年単位の耐久性も持っている。

 新規建築のビルに導入したり、既存ビルの窓ガラスを交換するだけでなく、透明な膜状の太陽電池を開発し、既存の窓ガラスに張り付ける形での導入も可能とするような研究も進めている。ゼロエミッションビルやゼロエミッションハウスを超えたゼロエミッションシティの実現を期待したい。

窓ガラスなどでの電波反射を制御し、屋内外間の通信環境を改善するナミゲートを開発

英幸テクノ株式会社

 5Gなどの高速無線通信ネットワークの普及が進み、ほぼ日本のどこにおいてもスマホなどによる通信が可能になってきたが、屋内ではそれら無線波が利用できない環境がまだ残されている。これは窓ガラスなどで電波が反射してしまうためであるが、英幸テクノは窓ガラスにとりつけることで電波の反射を制御し、屋内外間の通信環境を改善するデバイス「ナミゲート」の開発を行っている。

英幸テクノ株式会社 代表取締役 安川 昌昭氏

 ナミゲートは光学技術に基づいた電波の透過と反射の制御を行うデバイスであり、すでに国内外で知財を獲得している。既存の窓ガラスなどに後付けすることができ、電源も不要で周波数ごとに透過と反射の個別制御ができるといった特徴を持っている。屋外の5G電波はオフィスに入れたいが、社内で使っているWiFi電波は外に出したくない、といった環境にも適用可能だ。

 ガラス素材だけでなくプラスチック素材に対しても適用可能であるため、例えば5G基地局で使用されているアンテナ素子保護カバーにこの技術を応用することができる。現状だとこのカバーで数dbの損失が発生しているが、ナミゲートの利用で基地局の消費電力を削減することができる。

 また、5G電波だけでなくレーダー波にも応用ができ、自動車向け衝突防止レーダーに用いると、より遠くの障害物を発見できるようになり、自動車の安全性向上に貢献することができるとしている。

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