新たに生まれた4つの効果をもとに商用サービスを開始
「空気圧を適正に管理することで、事故を未然に防止できるほか、タイヤの寿命を延ばすことができた。さらに、人の手で行なっていた空気圧点検の作業が、画面上で即時に確認できるため、点検時間を大幅に短縮できた。そして、空気圧を整えることで燃料の改善が見られた」という。
「タイヤ空気圧・温度管理サービス」の構築に向けて、数百台の自動車にセンサーを取り付け、数十回に渡る実証実験を実施。そのたびに、顧客からの要望を反映して、システムを改善。商用サービスの提供につなげたという。
「サービスを開始するまでに、お客様との実証実験を何度も行なえる関係ができていたこと、外部パートナーとして、トライポットワークスと連携し、現場に入って検証したり、1週間に一度、課題を解決するための会議を行ない、住友ゴム工業のタイヤ屋としての目線だけでなく、トライポットワークスの通信目線、ソリューション目線からも解決策を検討した。課題認識が食い違うこともあったが、顧客にとってなにが大切なのかということに立ち返り、解決を図っていった」という。
また、「タイヤの空気圧や温度管理を自動化するサービスがこれまでなかったため、お客様にどんなベネフィットがあるのかを理解してもらうことにも苦労した。実証実験を繰り返すことで、お客様の価値が見えるようになり、それをお客様に提示し、そこからまた価値が生まれるという好循環が生まれた。ベテランの作業者が行なっていたことがデジタル化でき、人的余裕、経済的余裕が生まれたことで、接客などのサービスに振り分けることができるというメリットも感じてもらえている」とする。
新サービスへの懐疑的な見方にひとつずつ対処。通信面はソラコムのSIMを利用
一方で、住友ゴム工業の社内でも、当初は、新たなサービスには懐疑的な見方があったという。
「現場では、クラウドや通信、サーバーセキュリティなどの技術は未知の世界であり、新規事業を行なうには困難も多かった。社内からはタイヤ屋にデータビジネスができるか、サイバー攻撃のリスクに耐えられるのか、そもそもリスクがある事業をしなくてもいいのではないかといった声があがっていた。それに対して、ひとつずつ対策を打つことで、事業化につなげていった」とする。
特に「お客様に対して、安心、安全に、新たなサービスを提供するためには、セキュリティが大切である。システム構築後には、第三者機関に依頼し、疑似的なサイバー攻撃により脆弱性についても検証した」という。
そうしたなか、通信面においては、ソラコムのSIMを利用することで、セキュリティなどに対する課題を解決できたとする。
「タイヤ空気圧・温度管理サービス」では、パブリッククラウド上で運用している住友ゴムクラウドと、車載通信を結ぶ通信環境に、ソラコムのSIMを利用。これにより、閉域網での通信を実現。他者からの通信を遮断することで、サイバーセキュリティのリスクを大幅に下げることができたという。
「ソラコムのSIMを活用することで、通信環境における脆弱性の問題を一気に解決できたことは大きかった」とする。
さらに、住友ゴム工業では、グローバルでビジネスを展開しており、海外でも利用できるソラコムのSIMは、今後のサービス拡大にも有効に働くことと見ている。寺本氏は、「今回のサービスだけに留まらず、将来に向けて、データをもとにした現場力向上に取り組みたい」と語る。
たとえば、タイヤの空気圧データに、タイヤ摩耗などのデータを組み合わせることで、顧客の現場では無理や無駄がなく、最後までタイヤを使い切ることが可能になる。また、営業現場では最適なタイミングで、最適なタイヤを提案したり、製造現場では、過剰品質を防止し、コストの低減を可能にし、安くていいタイヤが提供できるようになったりすることを想定している。
さらに、シェアカーやMaaS、メンテナンスフリー、自動化、電動化といった新たなモビリティへの対応のなかでも、新たなサービスを創出することになりそうだ。
「大企業は、ベンチャー企業のような小回りはきかないが、データ活用では有利だと考えている。工場設備や、サービス人員およびメンテナンス人員などの資産に、データが有効活用できるようになるからだ。今後も現場力を向上させたいと考えている。だが、それを実現するには、さまざまな壁があるのも事実だ。そうした壁を一緒に乗り越える企業を募集したい」などと述べた。
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