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Apple Music独占ビートルズ『1』空間オーディオ化を手がけた音楽プロデューサーが語る

2022年03月02日 09時00分更新

文● 山本 敦 編集●飯島恵里子/ASCII

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ビートルズ「1」の空間オーディオリミックスを手がけた音楽プロデューサーのジャイルズ・マーティン氏

 ビートルズの世界的なヒット曲を集めたベスト・アルバム『1』が、アップル独自の立体音楽体験である空間オーディオに対応するコンテンツとして3月1日からApple Musicで配信されている。空間オーディオへのリミックスを手がけた音楽プロデューサーのジャイルズ・マーティン氏に、作品に寄せる思いを聞いた。

 なお、Apple Musicではビートルズのアルバム『1』のほかにも、発表から55周年のアニバーサリーを迎えた楽曲『Strawberry Fields Forever』『Penny Lane』の空間オーディオ版も2月28日から配信を開始している。音楽プロデューサーとして活躍した父ジョージ・マーティン氏と親子二代に渡ってビートルズの創作活動を支えてきたジャイルズ・マーティン氏が、ふたつの作品の空間オーディオ化に寄せたコメントをお届けしよう。

最先端のテクノロジーによって
ビートルズの音楽は何度も新しく生まれ変わる

 ジャイルズ・マーティン氏は2015年11月に発売されたビートルズのアルバム『1』のリミックスも手がけている。今回Apple Music限定で配信される空間オーディオバージョンのリミックスを担当した思いを次のように振り返っている。

 「まさか自分がビートルズのミキシングやリミックスを手がけることになるとは、思っていなかった。私はアビーロードスタジオに保管されているビートルズのアナログマスターテープを手にして聴くことができるが、本来は同じ体験を誰もが味わえるようになるべきだと思う。だから原音に忠実なサウンドをファンの皆様に届けられるように、いつもベストを尽くしている」(マーティン氏)

 ビートルズの作品は多くのファンに長く愛され続けるからこそ、当時最先端の音楽制作やオーディオ機器に関わるテクノロジーとともに「進化」も重ねてきた。アルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』もその一例だ。

 「ビートルズの作品の中で、ドルビーアトモスの技術を使って制作された最初のアルバムは『Sgt. Pepper』だった。ビートルズの作品はポールとリンゴ、オリヴィア(・ハリスン)とヨーコ(・オノ)、そして今は子供たちが音楽の偉大な遺産として受け継ぎ守っている。私のビートルズに関する仕事も、基本的には彼らの思いを受けたものだ。ポールとリンゴは、いつも音楽に関わる先端テクノロジーの可能性に対して、前向きな気持ちを持ち続けている。だから、彼らの最も有名なアルバムのひとつである『Sgt. Pepper's』も、新しいテクノロジーに挑むことを良しとしたんだ。ポールはいつもこう話している。『ビートルズの音楽をガラスケースの中に閉じ込めて、美術館に並べて欲しいとは思わない。僕たちの音楽を聴いた人々が何かを発見してくれることをいつも望んでいるんだ』と」(マーティン氏)

 今回ビートルズの最も有名な楽曲が、Apple Musicという今最もポピュラーな音楽配信プラットフォームを通じて世界中の音楽ファンに届けられることによって、「空間オーディオの感動」そのものに多くの人々が触れることへの期待感についても、マーティン氏は次のように語っている。

 「私は長い間、サラウンドの仕事に携わってきた。ラスベガスで公演されたビートルズのミュージックショー『LOVE』では、ホールに7000個のスピーカーを配置して壮大なステージを創り、またサラウンド録音も成功させた。でもその評判は、思ったほど周囲から聞こえてこなかった。当時サラウンドが、まだニッチなエンターテインメントだったからだ。サラウンドの魅力を人に伝えることは、難しい。興味を持った方々を、私が最高の環境を作り込んだオーディオルームに招き入れてお聴かせすれば、これは素晴らしい体験だと納得してもらえるだろう。もちろん、そんなことは不可能だ。だから、ベストな体験を多くの人々と共有することはとても難しい。Appleがようやく空間オーディオという音楽体験を通じて、多くの人々が感動を共有できる機会をつくったことは、とても有意義だと感じている」(マーティン氏)

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