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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第137回

アップルはなぜHomePodの製造を終了したのか

2021年03月30日 09時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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●スマートスピーカーとも、HomePod miniとは全く別の存在だった

 しかし筆者は個人的にHomePodが好きで、SONOSとともに自宅のオーディオ環境として定着させています。SONOSはWi-Fi対応スピーカーの先駆けで、いち早くApple Musicをサポートしたため、テレビのスピーカーとして、玄関、そして寝室と、家で3台使っています。同時に、ダイニングのオーディオとしてHomePodをステレオペアで利用しています。

 HomePodは空間を音楽で満たすコンセプトとなっており、空間の音の響き方を検出して、どこにいても最適なリスニングポジションになるよう調整する仕組みです。通常、オーディオは最もよく聞こえるポジションが狭かったのですが、HomePodはこの問題の解決に取り組みました。

 ツイーターは7方向に配置され、1台でもステレオ再生を実現。ステレオペアにすると、より強力に音位の認識ができるようになります。ただし、左に配置したスピーカーが左チャンネルのみ、右スピーカーが右チャンネルのみという振り分けを単純にするのではなく、やはり空間認識をして、壁の反射を想定に入れ、かつ、より広いリスニングポジションを実現するというアイデアです。

 アップルがスマートスピーカーとして打ち出さなかった理由もここにあります。音声アシスタントは確かに利用でき、音声で音楽再生などの指示ができます。しかし、HomePodで目指したのは、新しいオーディオの世界の革新だったのです。

 HomePod発売当時は「コンピュテーショナルオーディオ」というマーケティング用語を使っていませんでしたが、アップル製品の中で最高の「コンピュテーショナルオーディオ」技術を活用していたのがHomePodでした。

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