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独自CPU「M1」で処理性能&バッテリー駆動時間が大幅向上 新Mac特集 第20回

8GB/16GB、どっちを選ぶ? M1搭載MacBook Proのメモリーの違いによるベンチ結果

2021年03月14日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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メモリー要求の大きなアプリによるベンチ

 現状で一般的に利用されるアプリの中で、特に大きなメモリーを必要とする可能性があるものを挙げるとすれば、真っ先に思い浮かぶのは、ビデオの編集ソフトだろう。他の一般的なアプリでは、一まとまりのデータ処理のために、一時に数GBものメモリーを確保する必要のあるものは、あまり思いつかない。そこで、macOSに付属の一般ユーザー向けiMovieと、アップル純正のプロ用ビデオ編集アプリFinal Cut Proを使い、編集した動画を様々な解像度で出力するのに要する時間を計測した。

 なお、ビデオの編集段階の作業に関しては、8GB搭載モデルで5Kビデオを編集する際にも、Final Cutのレスポンスは良く、編集中のプレビューでもまったくコマ落ちが発生しなかった。やはり問題となるのは、編集後のビデオを指定した解像度でファイルに出力する際に要する時間の方だ。

 まずiMovieでは、長さが50秒の4Kビデオを、SNSなどに適した480pのSD画質で出力するための時間を計測した。この程度のデータ量では、8GBと16GBの差はほとんど認められない。また、テストの順番としては前後するが、結論的な数値を先に示しておこう。Final Cut Proで編集した43秒の5Kビデオを、やはり純正のビデオ圧縮ツールCompressorを使って4Kで出力するのに要する時間では、4倍以上の差がついた。もちろん、8GBよりも16GBの方が圧倒的に速い。このような条件では、明らかに8GBモデルではメモリー不足ということになる。

 iMovieの480p出力では差が出なかったものが、Compressorの4K出力でははっきりとした差になっている。それなら、他の解像度ではどうなのか、気になるところだろう。そこで、こんどはFinal Cut Proから様々な解像度で直接出力して、出力解像度の違いに対してメモリー容量がどのように影響するかを見てみよう。Final Cut Proの「共有」機能で動画を出力する際にメニューから選択可能な「マスター(デフォルト)」、「Appleデバイス720p」、「Appleデバイス1080p」、「Appleデバイス4K」、「YouTubeおよびFacebook」の各設定を利用して、「Compressorへ送信」したのと同じ43秒の5Kビデオを出力した。

 この「マスター」は、編集中のソースと同じ解像度なので、5K出力となる。また「YouTubeおよびFacebook」は、上のiMovieの場合と同じ480pのSD出力となる。

 この結果を見ると、まずソースと同じ5K出力では、解像度変換が入らないためか、使用メモリー量は少なめなようで、かかる時間は8GBと16GBでほとんど変わらない。また、16GBモデルでは、解像度変換にもほとんど時間はかからず、出力するデータ量による影響の方が大きい。したがって、5Kよりも4Kの方が、かなり短い時間で処理が終了している。一方の8GBモデルでは、480p〜1080pまでの解像度変換では、ほとんど実メモリー内での処理が可能なようで、かかる時間に大きな差はない。しかし4K出力だけが突出していて、解像度変換のためにメモリー不足になり、仮想メモリーのストレージ領域と実メモリーの間でスワップが発生しているものと思われる。

 念のために、上の表をグラフ化すると、傾向がはっきりと見て取れる。

 今回のビデオ出力テストは、あくまでも8GBモデルでメモリー不足を起こして処理が遅くなる1つの例を示したに過ぎない。とはいえ、1つのアプリケーションの動作で、実際にこのような状況に遭遇するのは、他のアプリではあまりないと思われる。またビデオ出力でも、ソースが4Kのものを4K出力する際には解像度変換が必要ないので、このようなことは起こらない。また、1080p以下のフォーマットへの解像度変換は、5Kからの変換でもメモリー不足を起こしていないことからもわかるが、4Kからでもメモリー不足は起きない。というわけで、メモリー的に厳しい状況が確認されているのは、いまのところソースが5Kのものを4Kで出力する場合だけとなっている。そのような使い方をしなければ、8GBモデルでも単独のアプリでメモリー不足による速度低下が生じることは、ほとんどないはずだ。

 ただし、実際にMacを様々な用途で利用する場合には、当然ながら複数のアプリケーションを同時に立ち上げて、切り替えながら作業する場合もある。その際は、個々のアプリとしてメモリー不足にならなくても、アプリの切替時にスワップが発生することがあり、切り替えがスムーズにできないこともある。また、仮想環境アプリを利用して、仮想マシンの上で複数のOSを起動するような場合には、それぞれのOSごとにそれなりのサイズのメモリーを確保する必要があるため、実装メモリー容量は多いに越したことはないのは確かだ。

 結論を一言で表せば、「5Kビデオソースを4Kで出力する必要があれば16GB、なければ8GBでもなんとかなる」ということになる。

 

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