予想通りの性能を見せた「CINEBENCH R20」
まずは定番の「CINEBENCH」から始めよう。本稿執筆中に最新版である“R23”が出たが、スコアーの計算方法が根本的に変わってしまったので、引き続き“R20”を利用する。
マルチスレッドテストの最速は16C/32TのRyzen 9 5950Xであることは予想通り。しかし1世代前の3950Xからの延びを考えると、Ryzen 9 5950Xだけ前世代からあまり延びていない(+9%)ことに注目。Ryzen 5 5600X対3600XTは+18%弱、前回レビューしたRyzen 9 5900XやRyzen 7 5800Xもそれぞれ前世代に対し+19%前後の伸びであることを考えると、フラッグシップモデルのRyzen 9 5950Xはややお買い得感に乏しい印象は拭いきれない。
この理由としてはTDP105WのRyzenのPPT(Package Power Tracking)はコア数に関係なく142Wに設定されているため。つまりCPU全体で使える電力の総量は決まっているのに、Ryzen 9 5950Xはシリーズ中最大のコア数を備えるため、各コアが利用できる電力の絶対量は減り、結果としてコアあたりの処理性能が落ちる。
今回のZen3アーキテクチャーの場合、ワットパフォーマンス的一番美味しいのは8C/16TのRyzen 7 5800X~12C/24TのRyzen 9 5900Xのあたりで、最上位の5950Xはコアの並列度が少しでも欲しい人のためのものといえる。Ryzen 9 5950Xにおける消費電力と性能の関係は、この後少し解説する。
また、シングルスレッドのスコアーに関していえば、Ryzen 9 5950Xは5900Xとほぼ同等。Ryzen 5 5600XはTDPが低い分上位モデルよりも若干シングルスレッド性能が落ちる。ただそれでもシングルスレッド番長だったCore i9-10900K等を完全に凌駕しているのは驚きしかない。
「PCMark10」ならコア数格上でも負けはしない
続いては総合ベンチマーク「PCMark10」だ。テストはゲーミング以外の性能を見る“Standard”テストとした。各テストグループ別のスコアーも比較して、得手不得手も見ていきたい。
総合スコアーのトップはコア数最多のRyzen 9 5950Xではなく、12C/24TのRyzen 9 5900Xだった。そのすぐ下にRyzen 7 5800Xも来ており、総合スコアーだけでは両者の優劣は分からない。だがテストグループ別で見るとRyzen 7 5800Xが上回っているものもあり、逆にRyzen 9 5900Xが勝っているものもある。
ただこのベンチで見る限りは、Ryzen 9 5950Xは突出している部分も激しく劣っている部分もない、いささか精彩に欠ける印象は否定できない(並列度特化のCPUにはありがちだ)。
一方Ryzen 5 5600XはTDPが格上の3600XTに対し総合でもテストグループ別のスコアーでも上回っている。Zen2→Zen3にしたことによる処理効率の上昇やレイテンシーの減少は、TDP 30Wのハンデを完全に覆している。そしてここでも、コア数が格上のCore i7-10700KをRyzen 5 5600Xが安定して上回っている。
EssentialsテストグループのスコアーはRyzen 7 5800Xを頂点とし、ここからコア数が多くても少なくてもスコアーは下がる。もしRyzen 5 5600XがTDP 95Wであったなら、もう少し差が縮まったことだろう。
LibreOfficeを利用するProductivityテストグループのスコアーは、Ryzen 5000シリーズ4モデルのスコアーがほぼ頭打ち気味になってしまった。前世代と比較すると大幅に延びているが、コア数やTDPで差をつけても、LibreOfficeのパフォーマンスにはほとんど差が見られないということを示している。
最も意外な結果を出したのはDCC(Digital Contents Creation)テストグループだった。Photo EditingとRendering and Visualizationはコア数勝負な側面があるが、今回の検証ではRyzen 9 5950XはCPUの力を出し切れないことが示されている。
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