RPAによる投資対効果はどれくらい?コスト削減だけではなく業務改革も

文●ASCII

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 RPAを導入する企業が増えています。特に大企業ではRPAがかなり普及しており、RPAを導入するだけでなく効果を確認して、導入後の業務そのものを変化・発展させる段階に移りつつあります。RPAは何に役立ち、導入することでどのような投資対効果(ROI)があるのでしょうか。RPAの導入によって業務はどのように変化していくのかを考えます。

RPAを導入することで期待されるのはコスト削減だけではない

 RPA(Robotic Process Automation)を導入すると、業務が効率化し、人件費削減や労働時間短縮などの効果があるとされています。これは目に見える、わかりやすい効果です。

 それだけではなく、RPAを導入して全社に展開していくと、ほかにもさまざまな効果があることがわかります。数字に現れにくい効果も多いのですが、これらの効果が重なり合って、業務が効率化しコスト削減につながるだけでなく、業務内容や業務スタイルそのものが変わっていくことも期待できるのです。

RPA導入による効果は測定できるか

 RPAの導入によって期待できる効果には、定量的効果と定性的効果の2種類があります。

 定量的効果は数値として得られやすいため、投資対効果(ROI、Return on Investment)の算出に用いることが容易です。一方で、定性的効果の測定は難しいため、投資対効果の算出には向かないでしょう。定性的効果は、一般的には付加効果という扱いになっていますが、実際には業務内容や業務スタイルの変革につなげていくことができるため、こちらも軽視できません。

 定量的効果

 人間が行っていたルーチンワークを自動化することで、労働時間を短縮させることができます。業務内容によっては、残業代も削減できるでしょう。RPAの導入により削減できた人件費が定量的効果にあたります。

 定量的効果の具体的な値は、以下の計算式で求めることができます。

 削減できた人件費(年)=1件の処理にかかる時間(単位:時間)×1年で処理できた件数×担当者の時給

 処理担当者が複数いる場合は、処理にかかる時間や時給は全担当者の平均値から出します。ポイントは、現在その業務にはどの程度の時間が必要なのか、RPAの導入によってどの程度業務時間を削減できるのかを正確に予測・計測することです。

 削減できた人件費から、RPAのライセンスや保守運用にかかる費用を差し引くことで、定量的効果による投資対効果を測定することができます。

 定性的効果

 定性的効果とは、数値では表しにくく、わかりにくい効果ですが、次のようなものが該当します。

・業務の自動化による人的ミスの削減や業務品質の向上

 RPAで業務を自動化することで、人間が操作することによる人的ミスを削減できます。ミスが発生した場合に必要になる、ミスに関する調査や再処理の手間とかかる残業代なども減らすことが可能です。さらに、ミスによる損害の発生や、売上機会の損失も防ぐことができます。

 また、業務を自動化することで、対応のムラがなくなり、同じ案件には同じ対応や処理で返すことが可能です。これは業務品質の向上から顧客満足度の向上にもつながります。

・業務の自動化と配置転換による人材不足の解消

 RPAで業務を自動化することで、単純作業やルーチンワークを行う社員を減らし、人手が不足している部門にまわすことができます。つまり、社内の配置転換だけで人材不足を解消することが可能です。

 RPAは残業代も休日手当も不要で、不眠不休で働くことができます。離職や異動がないため、人材採用費や教育費が無駄になることもありません。したがって、RPAによって置き換えられた業務は、社員の欠勤や離職により業務が滞る心配がありません。業務内容によっては、客先対応の多い通常勤務時間は社員が対応し、業務時間外のルーチンワークをRPAで置き換えることができるでしょう。業種によってはフロント業務を効率化し、営業やマーケティングに人材を割くことで、売上増加につながることもあります。

・セキュリティの向上

 RPAは、人間よりも高いセキュリティを維持できます。意図的な情報漏えいや、うっかりミスによる情報漏えいにつながることはありません。ただし、導入当初の設定や社内のセキュリティ対策はしっかりしておく必要があります。

RPAの導入や運用管理にもコストがかかる

 RPAの導入には、ほかのツールと同様に初期費用や運用管理費用など、ある程度のコストが必要になります。

 RPAの導入費用

 RPAの導入時には、次のような初期費用がかかります。

・導入支援スタッフの人件費

 RPAツールの選定から、導入研修、運用ルールの策定などを行う運用・管理チームが必要です。

 現場で実用的なRPAロボットを作成するためには、自動化する業務の洗い出しやRPAロボットの設計、作成したRPAロボットの動作テストなどを行わなくてはなりません。しかし、現場だけでこの工程を行うことができることは少なく、通常は運用・管理チームのアドバイスや手助けが必要です。専門のベンダーやコンサルタント会社に外注するほうが効率的な場合もあります。

・RPA専用端末、サーバーなどのハードウェア費用

 各自のPCと分けてRPAを実行させるための専用端末や、RPAロボットを管理するためのサーバーを新規に増設する場合は、その費用が必要です。既存の端末やサーバーを利用する場合も、設定に手間がかかることを見込んでおきましょう。

・RPAツールのライセンス取得費用

 RPAのライセンス費用は、利用するアカウントの数や期間により料金が設定されていることが多く、また、ツールによっても異なります。選定したツールの料金表を参考にするか、ベンダーに問い合わせましょう。

 保守運用の費用

 導入後には、保守運用のための費用も必要です。保守運用費用には、次のようなものがあります。

・人件費

 情報システム部門が社内にあり、必要なスキルを持っている場合は、運用・管理チームを結成するとよいでしょう。

 しかし、情報システム部門がない場合、または必要なスキルを持つスタッフが十分にいないという場合は、保守運用作業も外注しなくてはなりません。その場合には、外注先のベンダーやコンサルタント会社への費用が発生します。

・メンテナンスに必要な費用

 人件費以外にも稼働中のハードウェアの部品交換や更新、ライセンスの更新などの費用が必要です。RPAの運用管理ツールをあわせて導入する場合は、そのライセンスも必要になります。ライセンス費用の料金体系はツールにより異なりますので、選定したツールの料金表を参考するか問い合わせましょう。

 投資対効果を大きくするにはどうすればよいのか

 RPAの投資対効果(ROI)は、RPAの導入により削減できた費用から、RPAの導入費用や保守運用の費用を差し引くことによる数値として得ることができます。投資対効果の算出に用いることができるのは、定量的効果だけです。

 定量的効果は、RPAで自動化する業務ごとに得ることができます。手作業による操作をRPAロボットの動作に置き換えるので、置き換える部分を増やすことで、導入効果は上がっていくでしょう。

 RPAで自動化する業務が多ければ多いほど、多くの人件費を削減して投資対効果を大きくすることができます。

RPAはどのように業務を変えていくのか

 RPAの導入によって、業務が効率化されるだけでなく、業務の内容や業務のスタイルを変えていくことも可能です。

 よりクリエイティブな業務へのシフト

 RPAの導入によって、ルーチンワークや単純作業の多くがRPAロボットに置き換えられます。配置転換により、希望の業務につくことも可能になるかもしれません。従業員は、よりクリエイティブな仕事や、RPAロボットにはできない業務にシフトしていくことになるでしょう。RPAを導入することで、業務の内容が変わっていくのです。

 働き方改革の推進

 RPAの導入によって、業務は効率化され、労働時間が大きく削減されます。特に時間外業務は大きく削減されるでしょう。労働時間が短縮されれば、フレックスタイム制など、勤務体系も変わってくるかもしれません。仕事に対するモチベーションの向上や、ワークライフバランスの最適化にもつながります。RPAを導入することで、業務スタイルも変革されていくのです。

RPAは業務を大きく変えていく

 RPAの導入により、ルーチンワークや単純作業の多くは自動化され、人の手から離れていくと予測されています。しかし、RPAは人間の仕事を置き換えるだけのものではありません。RPAが単純作業を行うことにより、人間の業務はRPAのルール作成など、よりクリエイティブで頭を働かせる労働にシフトしていく必要があります。RPAの導入により、人間の業務は大きく変わっていくでしょう。それがRPAによるもっとも大きな導入効果なのです。

※本ページの内容はユーザックシステムの「業務改善とIT活用のトビラ」の転載です。転載元はこちらです。

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