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時計デザインの基本文法を超えた「Eco-Drive Riiiver」デザイン

2020年05月22日 10時00分更新

文● 渋谷ヤスヒト 編集●飯島恵里子/ASCII

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大きなスケルトン針、細いアワーインデックス、外周部のアクセントライン、どれも新しいEco-Drive Riiiverの顔を表す要素だ

4. 時計デザインの「基本文法」を超えた、新しい魅力

 ではいよいよ、新しいEco-Drive Riiiverのデザインを「視認性」「操作性」、そして「審美性」という3つの「基本文法」から読み解いてみたい。

 まず視認性については、2019年11月に発売されたファーストモデルよりも、先に述べた時計デザインの「基本文法」を守りながら、新たなアイデアの導入で、これまでにない進化を遂げたといえる。

 そのひとつが、時針と分針で、さらにサブダイヤル用で、それぞれ長さが違うスケルトン針の採用だ。サイズが充分に大きいので視認性は抜群。そのうえ、スケルトンにすることで、優れた視認性を確保しながら、軽やかで適度な存在感を実現している。

 これは、Eco-Drive Riiiverの「時計を超えたライフハッカブルツール」という製品の性格を反映させ、伝統的な文法にとらわれずインジケーターと考え、時針と分針をあえて同じ長さに、しかし時針の先端から1/3をマットブラックにすることで時針の機能も実現したファーストモデルとは対照的なデザインだ。

 文字盤やインデックスのデザインも基本的に非常にシンプルだ。文字盤カラーを写真のブラックやブラウン、ブルーという落ち着いた色にする一方で、ベゼル部分にプリントされた細いアワーインデックスは、アラビア数字付きだがこれ以上はないほどシンプル。

 だが3時位置から6時位置、6時位置から10時位置に色味の違うアクセントカラーのラインを外周部に入れること、さらにその上から、中央が盛り上がったドーム型の風防を、文字盤を超えてベゼル上にまで、そのままピッタリ重ねている。

ドーム型のサファイアクリスタル風防は、新デザインのEco-Drive Riiiverを象徴するアイコンだ

 時計のプロの間では、ドーム型のサファイアクリスタル風防というと、クラシックなスタイルを思い浮かべる人が多いはず。だがこれは、それとはまったく逆の印象だ。ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち傷がつきにくいドーム型のサファイアクリスタル風防を、ベセルとしても活用して、これまでにないクールでモダンな印象を実現した。これは、これまでのシチズンの時計にはなかった新しいアプローチだ。

 素晴らしいのは、このようにベゼルに重ねることで生まれた、魅力的な視覚効果。ベゼルに重ねられたサファイアクリスタル風防を通して、インデックスの小さなアラビア数字や細いバーインデックス、アクセントカラーの丸いラインが、まるで拡大レンズを通したように鮮やかにクールに浮かび上がってくる。

 またケース右側のリュウズや上下2つのプッシュボタンもBZ7015-03Eの場合は、外周のラインと同じriiiverの起動ボタンとなるオレンジ、リュウズの白、グレーの差し色を入れることで、ひと目で役割を見分けられ、確実に選んで操作できるようになった。つまり操作性も向上している。

 さらに針からインデックス、文字盤まですべてを美しく、なめらかに一体化させたことで、視認性ばかりでなく審美性、つまり美しさも新しい次元に突入した。

 担当デザイナーによれば、このシンプルな印象だが実は凝った美しい文字盤デザインは、この時計と組み合わせて使うスマートフォンのシンプルな表記から発想したのだという。そしてケースサイドやケースバックのデザインも、このシンプルな「顔」と見事にフィットする、シンプルでクールなもの。

 Eco-Drive Riiiverのファーストモデルは、ひとことで表現すれば、モダンポップな軽やかさが魅力。だがこの新モデルは、同じようにモダンなテイストに加えて、よりクールで落ち着きのある、時計らしい大人のためのデザインに仕上がっている。

 実際に腕に着けてみると、エッジを柔らかに丸く仕上げたケースバック、裏側にダイヤルやベゼル部分に入れられたアクセントカラーと同じ色を効かせたシリコンバンドの出来の良さもあって、装着感も軽やかで心地よい。

 またファーストモデルでは工具が必要だったベルトの交換が、スマートフォンのプログラミングで機能が自在にカスタマイズできる「Riiiver」のデバイスにふさわしく、自分の手で簡単に交換できるタイプになったことも、細かいが魅力的な進化。

 これまで時計に興味がなかった人はもちろん、時計らしいデザインのスマートウォッチを求めていた大人にぜひおすすめしたい。

 

渋谷ヤスヒト/オフィス・ノマド代表

 時計ジャーナリスト、編集者。徳間書店の「グッズプレス」と時計専門誌の副編集長を経て独立。在職中の1995年からスイス2大時計フェア、国内外の時計の取材を続けている。時計以外の取材、編集、執筆も多い。

 

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