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「いまはベンチャーが大手を選択する時代」超先端分野で東芝がNextremerと組んだ理由

『TECHNO-FRONTIER×IoT H/W BIZ DAY』コラボゾーン出展募集説明会/講演会レポート

連載
IoT H/W BIZ DAY 2019 by ASCII STARTUP

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がっちりスクラムを組んでオープンイノベーション成功を目指す

 ここからは、モデレーターと登壇者によるセッションとなる。

北島:「ご説明いただいた研究課題発のオープンイノベーションの場合、いきなりビジネスになるのは難しいと思いますが、どのような形でお話が動いたのでしょうか?」

向井氏(以下、敬称略):「研究者の方が来てくれて、意気投合したのが最初です。事業がないと成立しないので、そこをお互いがすりあわせることによって、共同研究を開始しました。ベンチャーの研究投資って尖っているところはありますが、すべてができるわけではない。そこは補完関係だと目線を合わせながら進めていきました」

綿引氏(以下、敬称略):「我々の目線では、『リカイアス』の技術責任者と向井さんがつながったのが大きくて、おかげさまで『リカイアス』自体は事業推進まで持って行けました。『SBM』の研究自体、1年前までは完全にボランティアでやっていたのですが、なんとか出口を考えないといけない。その時に向井さんとつながることができました」

岩崎氏(以下、敬称略):「たまたまリカイアスの担当技師長が量子コンピュータの研究所の出身で、ソフトを工夫したらシミュレートできるので使い道はないかと相談を受けていました。その技師長が向井さんとお付き合いがあったので、ハブになって結びついたという感じです」

北島:「今回の座組としては、Nextremerに仮説推論という技術課題があって、そこがかみ合ったということですか?」

向井:「そうです。東芝さんが『SBM』のPaaSを持っているので、その上で仮説推論を解くためのアプリを作っています」

綿引:「我々としては世界一速いエンジンができたぞ、と。これをエンジンとして販売していこうと考えたのですが、『本当の実問題はどこにあるのか』というのはなかなか思いつきませんでした。それはお客さまの悩みとかをわかってらっしゃる方と一緒にやらないと難しいと言うことですね」

岩崎氏:「仮説推論がなぜ組み合わせ最適化問題なのか、というところは我々では絶対にわかりませんでした。ずっとNextremerさんが研究されているなかで、これを組み合わせ最適化問題まで落とし込み、それを速く解きたいという動機をたまたまお持ちだったというのが大きいかなと思います」

綿引:「ボランティア段階から脱して、新規事業を立ち上げるかどうかは不安でしたが、実問題がありそうだなと見えてきたので、私どもとしても思い切って会社にお願いして、人と予算を付けてもらい、新規事業開発室を立ち上げさせてもらいました。これで、やっと会社ベースでやれるようになったので、スピードが加速して今にいたっています」

北島:「オープンイノベーションって言っても、現実はただの受諾開発だったりするケースもありますが、今回は両社共に人を出して、開発しているのですね。共同研究では知財など契約面で難しい所もあると思いますが、スムーズに進みましたか?」

綿引:「我々はとにかくエンジンをやるということで、エンジンとアプリケーションのつなぎのところをやってもらえるパートナーさんを探していました。パートナーさんからは、今後もいろいろ要求を受けると思うんですが、それは逆に言うと、エンジンの強化につながるので、我々としては大変ありがたい話だと思っています」

岩崎:「元々リカイアスというAIの開発でつながりあっていて、信頼関係があったことが上手くいった理由だと思います」

向井:「契約までの時間はかかりましたね(笑)。私も大手出身なので契約に時間がかかるのはわかります。僕は、この世界は浪漫と我慢が必要だと思っています」

北島:「SBMの事業として、直近見えている壁は何でしょうか?」

綿引:「今はPoC(実証実験)版として無償で出していますが、10月に有償版を出します。規模や速度を速めようとしているのですが、多分、それだけでは足りません。パートナーさんが使いやすいような仕掛けにまだできていないので、そこをいち早くやっていかなければいけない。そのためには、数多くのユースケースを我々として経験していかなければいけないので、いろんな人の力を借りていきたいと思っています」

岩崎:「SBMを広げようと思うと、ユースケースをパートナーさんに開発してもらう必要があります。そのためには、もちろん使いやすいインターフェースも必要ですが、そもそもの性能とか精度とか、いろんなアプリケーションの間を埋めるためのソルバーも充実させなければなりません。そうしないことには、パートナーさんに開発してもらうことすらできない、というのがしばらく続きそうで、そこをどうやって打開するのか、と焦っているところです」

向井:「我々は早くから、研究としてアーリーアダプターとして、(SBMの)PaaSを使っているので、慣れてはいます。もっとこうしたほうがいいというところはあるので、実問題を解くプロダクト研究の中で、報告していきます」

北島:「Nextremer自体、いろいろな大手企業・研究所とコラボしていると思うのですが、そのような相手の見つけ方ってありますか?」

向井:「この方法が正しいかどうかわからないんですけど、やはり、素晴らしい技術を見つけるためには、研究者と話すことを大事にしています」

北島:「東芝としても、オープンイノベーションというキーワードを取り巻く環境として、現場で変化は起きていますか?」

綿引:「変化を感じています。まさしく今はベンチャーさんが大手企業を選択する時代です。大手企業の新規事業セクションでは、出島みたいな規模で武器と人を持たせてもらわないと難しいんですけど、今回はこれを持たせてもらったので、それなりに回っているという状況です。たまたま3月に、ある程度予算を決めてお願いし、説得できました。これでずっと許されるわけではありませんので、来年くらいにはちゃんとした数字にしていきたいと思っています」

北島:「この先、長期的にはどんな絵図を見ていますか?」

綿引:「我々、主業がソリューションベンダーなので、最終的にはこういった仕掛けを我々のソリューションにつなげていかなければいけません。とは言え、既存事業をやってるメンバーに浸透させるのは難しいので、今回みたいなパートナーシップでソリューションを一緒にやっていけるようにしていきたいと考えています」

 最先端の量子コンピュータに関連する分野でも、大手とベンチャーのオープンイノベーションが進んでいるのは驚いた。しかも、お互いが強みを補完し合って、しっかりと前に歩を進めている。SBMと仮説推論がどのように実を結ぶのか、今後の動向から目を離せなさそうだ。


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