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「お菓子でプログラミング」の企画をグリコの担当者はいかにして通したか

2017年08月15日 08時00分更新

文●D2Cスマイル

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「試して面白いアプリならOK」グリコがプログラミングアプリを制作できた、上層部を納得させる手法を伺いました。

第4回目となる「コードアワード2017」においてグランプリを受賞した、江崎グリコ株式会社によるプログラミング教材『GLICODE』(以下 グリコード)。

「コードアワード2017」オフィシャルガイドブックに掲載された本編に続く「番外編」では、グリコードによって見えた「お菓子と子どもの関係性」の新たな社会的課題、イノベーティブな企画を通すことができたポイントや、イノベーティブな企画を実現するチームづくりのカギなど、誌面だけでは語りきれなかったインタビューを紹介します。

(左から)アビームコンサルティング株式会社 本間充氏、江崎グリコ株式会社 マーケティング本部 広告部クリエイティブチーム兼アシスタントグローバルブランドマネージャー 玉井博久氏、株式会社電通 CDC クリエーティブディレクター 小池宏史氏

「お菓子と子どもの関係性」の新たな社会的課題

本間 これまで非常にポジティブなお話を聞かせていただきましたが、何かネガティブな反響は? 審査をしていて一つ感じたのは、公立学校のような教育機関って、特定企業の商品を扱うことに拒否反応を示しますよね。それがグリコードでは、教室の机に「ポッキー」が広げられている。普通に考えれば、ちょっと有り得ない。

玉井 そうした観点で言いますと、ネガティブというか、リリース後に気付かされたのが「グリコードは今のままでは義務教育の現場では、使用できない」ということです。今、実際に小学校の授業で使用いただいていますが、これはあくまでも課外授業であって、義務教育の一環ではありません。「では今後、義務教育として使ってもらえるのか」と問うと、答えははっきり、「難しい」と言われています。その理由は特定企業の商品であるからではなく、ただ一つ、アレルギーの問題です。

小池 学年に何十人もいるわけではありませんが、誰かしらが、お菓子の原料にアレルギー反応を起こす可能性が否めない。とくに小学校ではかつて悲しい事故もあったので、今まで認識の甘かった教育機関の人たちが神経質になっている側面もありますし、私たちも当然考えなければなりません。

本間 するとグリコードがきっかけとなり、「お菓子と子どもの関係性」について、新たな課題が見えたとも言えそうですね。

玉井 まさにその通りです。まだ詳しくお話しできる段階ではありませんが、今後の重要課題として、すでに手を打ち始めています。義務教育の現場で使用できるかという問題だけでなく、同じことがご家庭でも起きますし、「アレルギーを抱えるお子さんに対して、どうアプローチできるのか?」という模索は、グリコードを企画したときと同じく、社会的な課題への取り組みにもつながるはずです。

小学校義務教育課程の授業用として「グリコード」学習用キットを配布
ニュースリリース|江崎グリコ株式会社 https://www.glico.com/assets/files/20170731-NR-glicode_J-2.pdf

イノベーティブな企画を実現するチームへの信頼と「楽しさ」

本間 あらためて、このイノベーティブな企画を通すことができたポイントを振り返ってみると? 戦略的な資料作りの他にも、何かポイントがあったのでは?

玉井 そうですね。プレゼンに関しては最初の段階から一貫して、とにかく作った資料を見せることに重きを置いていました。当然、上層部は、プログラミング教育を経ている人間ではありませんし、デジタルについても詳しくありません。ですから実際にアプリを見せるのなんて、毎回、5秒くらいですよ(笑)。その分、先ほどお話ししたような「ブランド価値の上昇」と「その裏付け」については毎回、丁寧に説明していました。作成したパワーポイントの資料で、プレゼン内容のほぼすべてを説明しきるイメージです。

本間 コードアワードのテーマでもある、「エクスペリエンスプロデュース」とか、「エクスペリエンスマネージメント」の表現を理解することって、どこの企業も相当、悩まされていますが、なるほど、アプリに関しては「見せない」という選択ね(笑)。

玉井 そうした体験の面白さに関しては、制作サイドの皆さんに「とにかく楽しんで作ってください」と伝えていました。そこで私が実際にプレイしてみて、面白ければOK。開発が進むごとに上層部の確認を経ていては、話が進みません。だからアプリの実装に関しては、「私に任せてくださいよ」という姿勢ですね(笑)。

小池 私たち制作サイドに対する信頼の大きさが、グリコさんらしさですよね。「お菓子の会社」と聞くと、悲しい顔をしながらお菓子を作っているイメージは、どうしても湧かないじゃないですか。湧かないですし、ニコニコしながらお菓子を作っていてほしい。そうした楽しいもの、人を喜ばせるものを作り続けている企業には「作る側も楽しまなければ」という意識が根付いていると、今回、あらためて感じさせていただきました。

本間 制作サイドへの厚い信頼。施策による新たな体験の提供や創造性はもちろん、それを作り上げた「チームも評価していこう」というのが、コードアワードの大きなテーマです。今回のお話を聞いて、その2つが見事に実現された施策であり、チームだと実感しました。まさにグランプリにふさわしい! 次回の施策に続く玉井さんの大いなる野望についても、期待しています。

(記事提供:D2Cスマイル

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