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デジタル時代のアナログオーディオ入門 第1回

面倒な手順が楽しい‼ レコードプレーヤーの使い方をイチから解説!

2016年04月18日 10時00分更新

文● 鳥居一豊

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トーンアームの調整がいい加減だといい音を楽しめない

 ここで、トーンアームの調整が必要な理由について解説しよう。アナログレコードは、レコード盤に音の正体である振動を直接刻み込むという極めて原始的な方法で作られている。この原理自体は1800年代後半に発明された蝋管型の蓄音機とほぼ同じだ。

 レコード盤に接地したレコード針が溝に刻まれた振動と同じように震えるので、この振動を拡声器に伝えると耳に聞こえる音量になる。これが電気を使わない蓄音機の仕組み。

 アナログレコードの場合は、針の振動を元にしてコイルと磁石で発電し、電気信号に変換する。極めて微弱な信号なので専用のフォノイコライザーアンプが必要なわけだ。

 単純な仕組みだからこそ、再生は極めてデリケート。レコード盤をトレースする針の動きは外部からの振動を受ければすぐに影響を受けてしまう。レコード盤に刻まれた音楽信号以外の振動はすべてノイズとなって音に現われる。

 だから、トーンアームはレコード針の動きを邪魔しないように、仮想的にレコード針が宙に浮いた状態を維持する必要がある(ゼロバランス調整)。

 なおかつ、レコード針が適正な音を拾えるように、指定された針圧に調整されている必要がある(針圧調整)。アンチスケーティングとは、トーンアームが回転するに従って内側に移動していくが、このときの内側への動きを最適に調整するためのもの。

 記事を読んだだけで面倒だと感じる人は多いはず。実際に取扱説明書を見ながらやってみると本当に面倒だ。だからこそ、CDが初めて登場したときにその再生の簡単さには誰もが驚いたし、あっという間に普及したわけだ。

 年寄りの小言みたいで申し訳ないが、今からアナログレコードを再生しようというなら、こういう手間をむしろ楽しむ気持ちでいないとただただ大変なだけだし、音も悪い。

 興味のある人は、本体の水平調整もでたらめ、ゼロバランス調整も針圧調整もせずにレコードを再生してみるといい。レコードプレーヤーは原理が単純なので、それでも音は出る。

 その後、じっくりと時間をかけて調整を行なってからもう一度再生してみよう。別物と思うくらい音が変わることに驚くはず。手間を掛けたら、そのぶんだけ音に違いが現われる。そこがアナログ再生の面白いところなのだ。

プレーヤーをオーディオ機器と接続
電源コンセントにも注意を払う

左端のスイッチで出力(PHONO/ライン)を切り替える。PHONOの場合は右端のグランドにもケーブルを接続する

左端のスイッチで出力(PHONO/ライン)を切り替える。PHONOの場合は右端のグランドにもケーブルを接続する

 これでレコードプレーヤー側の準備は完了。続いてはオーディオコンポなどと接続する。PS-HX500の場合は、フォノイコライザーアンプを内蔵しているので、赤と白のオーディオケーブルを使って普通のアンプやミニコンポのライン入力端子と接続すればいい。

 そのとき、レコードプレーヤーの端子付近にある切り換えスイッチをライン側に切り換えること。

 フォノイコライザーアンプを内蔵したオーディオ機器や別途フォノイコライザーアンプを接続する場合は、切り換えスイッチをPHONO側に切り換える。そして、オーディオ信号とは別にアース線をそれぞれ接続する。プレーヤーとアンプのアース(基準電位)を揃えてやる必要があるのだ。

 また、電源の取り方にも注意する場合もある。PCをつないだコンセントと一緒につなぐなんてもってのほか。電源から回り込んだノイズが音を汚してしまう。

 オーディオでは当たり前に言われることではあるが、デジタルオーディオはレコードプレーヤーに比べれば圧倒的にノイズに強いので、こうしたテクニックはただの行儀作法のように感じている人も少なくないだろう。

 だが、レコードプレーヤーでは明らかにノイズ感に違いが現われる(デジタルオーディオ機器でもそれなりに違いは生じる)。

 PS-HX500の場合、フォノ出力のレベルは3mVだが、ライン出力になると190mVにもなる。その差はおよそ63倍。こんなに微弱な信号を最終的にスピーカーを駆動するような大電力に増幅するのだから、信号と一緒にノイズも大幅に増幅されてしまうことになる。わずかなノイズの影響が音に現われるというのは納得だろう。

 それどころか、接続した機器の相性によってはハウリングと呼ばれる現象の原因にすらなる。カラオケボックスでマイクとスピーカーを近づけたときに発生するのも同じもので、最悪スピーカーを破損するので注意すること。

 ハウリングについては、現在のレコードプレーヤーではあまり心配することはないが、ノイズ感に差が出ることは少なくないので、電源の取り方はいろいろと試して一番ノイズ感が少なくなる状態を見つけよう。

 このときは、レコード針を浮かした状態のままでアンプのボリュームを上げていってみるとわかりやすい。「サー」というノイズのほかにうなっているような音が出ていることがある。完全になくすのは難しいが、電源の取り方次第で不要な音は大きくも小さくもなるのがわかるはずだ。

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