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iOS 9の広告ブロックはアナリティクスも遮断するのか?

2015年11月10日 11時00分更新

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今回はiOS9に搭載された「コンテンツブロッカー(Content Blocking Safari Extensions)」についてです。

コンテンツブロッカーとは?

最近のWebサイトではページ内に画像やテキストの広告が点在するものが多々あります。これらはそのページを表示する際に、広告用のテキストや画像の取得、閲覧者情報の送信などレスポンスに影響する挙動をすることがほとんどです。そのページの記事を見たいというだけのユーザーからしたら邪魔な存在です。

「ユーザーが意図しない、あるいは望まないコンテンツをブロックすることでサイトをスピーディに表示する」

コンテンツブロッカーは、これを実現します。

2015年9月16日から配信が始まったiOS9のSafariに、この機能が導入されました。この機能自体はAppleが開発提供したものですが、実際にコンテンツをブロックするのはサードパーティが開発するコンテンツブロックアプリです。ユーザーはこれらのコンテンツブロックアプリをインストール・設定することで広告などをブロックすることができるようになります。

ブロックされるものは大きく3つです。

  1. 特定のURLにあるコンテンツ
  2. 特定のURLに紐づくクッキー
  3. 特定のIDやCLASS名を持つHTMLタグブロック

ただ、「どのように」「何を」ブロックするかは、コンテンツブロックアプリによってさまざまです。

さまざまに存在するコンテンツブロックアプリ

10月19日現在、App Storeで「広告ブロック」や「コンテンツブロック」で検索すると結構な数が出てきます。無料版も有料版も。それぞれ特色があるようです。

AppBankが「iPhoneのSafariで広告をブロックする『コンテンツブロッカー』まとめ(随時更新)」を参考にしてみてください。

コンテンツブロックアプリ「Crystal」を試してみる

App Store有料ランキングで1位を獲得していた「Crystal」を試してみました。

その結果が、こちら。

02.png

出典:Amp.

おー見事に広告バナーが消えてます。他のサイトでも試してみたのですが、サイトによっては消えない広告もありました。また表示崩れが発生しているようなケースも…。

Googleアナリティクスもブロックされるのか?

それでは、ページビューなどのアクセス解析情報はどうなのでしょう? Googleアナリティクスで試してみました。

検証は、Googleアナリティクスのトラッキングタグを入れただけのHTMLを用意し、SafariのWebインスペクタで通信状況をウォッチする方法を取りました。ちなみに、iPhone Safariで表示しているページのWebインスペクタを開くには、MacとiPhoneをケーブルで接続し、Mac Safariの「開発」メニューにある接続先端末名を選択します。タグはユニバーサルアナリティクスタグを使いました。

ページへのタグ埋め込みパターンは、

  1. Googleアナリティクスのトラッキングコードを直接埋め込み
  2. Google Tag Managerのコードを埋め込み

の2種類用意しました。

通信できていればWebインスペクタの「ネットワーク」タブに、1の場合は「analytics.js」、2の場合は「gtm.js」とそこから呼ばれる「analytics.js」が表示されます。

検証をしたコンテンツブロックアプリは以下の3つです。

  1. Crystal(有料)
  2. 1Blocker(無料※アプリ内課金)
  3. Adバスター(有料)

vs. Crystal

  1. Googleアナリティクスのトラッキングコードを直接埋め込み:計測不可
  2. Google Tag Managerのコードを埋め込み:計測不可

CrystalはGoogleアナリティクスもGoogle Tag Managerも通信を遮断しているようでした。

vs. 1Blocker

  1. Googleアナリティクスのトラッキングコードを直接埋め込み:計測可
  2. Google Tag Managerのコードを埋め込み:計測可

vs. Adバスター

  1. Googleアナリティクスのトラッキングコードを直接埋め込み:計測可
  2. Google Tag Managerのコードを埋め込み:計測可

1Blocker、Adバスター共にGoogleアナリティクスもGoogle Tag Managerも通信できているようでした。

結論:コンテンツブロックアプリによって計測できたりできなかったり。

Crystalはネット情報では10万以上ダウンロードされたアプリのようなので、これが広まったら計測誤差が大きくなってやっかいです…。

各コンテンツブロックアプリがブロックしているURLへ擬似的に通信テストをして、コンテンツブロックがONになっているかどうかの判定はできるようです。なので、コンテンツブロックをOFFにしないと見られないようにしたり、メッセージダイアログを表示してOFFを促すことはできそうです(その対応がよいかどうかは別として)。特定のHTMLタグエリアが表示されているかどうかを確認する方法でも判定できそうです。

ユーザーにはありがたい機能でもサプライヤーには辛い機能

アクセス解析や、広告媒体を提供する仕事、広告を出したい企業などなど、影響を受ける企業が多岐に渡りそうです。一部コンテンツブロックアプリ開発側に申し込めば、ホワイトリストに入れてくれるものもあるようですが、コンテンツブロックアプリが多数出ている現状ではいたちごっこにしかなりません。

もし、Google Chromeがこの流れに乗ってしまったら恐ろしいですね。今回は以上です。

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