今回のことば
「ソニー時代の反省を踏まえて、稼ぐ力をつける必要がある。これが、VAIOの自立につながる」(VAIOの大田義実社長)
自立という言葉に力を込めた、VAIO大田社長
VAIO株式会社の新社長に大田義実氏が就任してから約3カ月が経過した。
8月19日に行った就任記者会見では、「私は、2年目の最初から、この会社の社長に就任した。1年目は、会社の外枠づくりができた。これからの1年は、会社の中身を作る。ソニー時代の反省を踏まえ、稼ぐ力をつけ、自立する会社を目指す」とする。
1年目はソニー出身の関取高行氏の社長体制で器づくりに取り組んだVAIOだが、2年目からは、IT業界での経験がない大田氏を抜擢して、経営体質の改善に挑む。
会見で大田社長は、「自立」という言葉を何度も使った。
「自立とは、設計、製造から販売、サポートまでの一貫した体制を構築し、当社の意思のもとで、それをコントロールし、収益を継続的にあげていくことを目指す」と、大田社長は説明する。
作るのは自分たち、売るのはソニーさん
これまでのVAIOの仕組みは、設計、製造は自前で行うが、販売はソニーマーケティングが一手に担っており、一気通貫の体制とはなっていなかった。
「製品品質については保証しても、販売責任、収益責任がなかった。作れば売れるというソニー時代のような大企業のままでいてもらっては困る。収益責任を持つ組織へと移行し、社員1人1人の意識改革にも取り組んでいく」とする。
ソニーマーケティングを通じた販売に加えて、6月に、VAIO社内に営業部を新設。BtoCでは加賀ハイテックと提携し、196店舗の量販店などでVAIOを販売する。
量販店では、今年3月から開始している個人向け標準モデルの取り扱いを拡大でき、店舗に商品を在庫することから、店頭で購入して、そのまま持ち帰ることができる。従来は、店頭で購入しても、後日、VAIOから配送される仕組みが中心だった。
また、BtoBでは、営業部のなかに技術営業部門を配置。ソニーマーケティングの法人営業部との同行営業や、ソニーマーケティングがカバーできない分野にも踏み出していくことになる。
「技術営業部隊は、長野県安曇野市にいる技術者が自らの意思で手をあげもらい実現できた組織。VAIO ZおよびVAIO Z Canvasのような説明が必要な製品に関しては、それを開発した技術者が、直接、営業活を行うことになる。また、なぜ売れないのか、どんな機能をつければいいのかといったことを技術者が知り、それを次の製品に反映させる役割も担う」と語る。
ここに大田社長が語る「自立」の姿がある。
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