ハイレゾのいい音を聴きたいというのなら、専用機の購入が近道
一方、ネットワークオーディオの方は、オーディオメーカーが頑張って自社のノウハウを取り入れて、いい音が出る機器として作られているので、初心者がハイレゾの魅力を知る近道になります。
個人的な感覚ではありますが、普段Excelなんかを使っているPCに安価なUSB DACを付けたぐらいの環境では、100%あるうちの30%ぐらいでしょうね。ネットワークプレーヤーであれば、何もしなくても60~70%ぐらい引き出せる。
ネットワークプレーヤーのさきがけになったLINNの「Klimax DS」は単体で300万円近い高価な製品でしたが、最近では10万円以下で買える国産製品も少なくありません。
LINNはPCMの再生のみにこだわっているメーカーですが、DSDの再生も可能で、価格も比較的手ごろな製品が、パイオニアやマランツ、デノンといったメーカーから登場しています。
スペックの注目ポイント、PCMとDSDの違いとは?
一昨年ぐらいまでの状況であれば再生機器は、96kHz/24bitのPCMに対応していれば十分だったんですけど、去年ごろから192kHz/24bitのソースが増えてきたので、192kHz/24bitの機器がマストでしょう。
同様にDSD対応機も昨年から急速に増えて、今年はDSD対応でしかも5.6MHzが再生できないと一人前じゃないぞという感じですね。来年は384kHz/32bitや362kHz/32bit、11.2MHzのDSDもどんどん出てくるでしょう。
実はDVD-AudioとSACDの時代にも近い話があったのですが、SACDとDVD-Audioの違いは何かというテーマもあります。DVDオーディオのリニアPCMはとても情報量が多く、明快で明晰。細部まではっきりとした音で、解像感が高い。
一方DSDは響きが綺麗で、肌触りが素敵で、ヒューマンな香りが愉しく、アナログ的な優しさを感じ、臨場感がすごく豊かです。どちらも良いという感じですが、実際問題としてかなり音調に違いはありますね。
ひとことで言えば、くっきりとしたPCM、しなやかなDSD。デジタルらしさをさらに追求したPCM、デジタルでありながらアナログ的な感触を持つDSDと言ってもいい。SACDを作ったソニーはCDの限界を知ってたんですよ。CDの延長線上にあまり未来はない。だからCDとは違うものを作ろうとしたし、全く違う方式で1bitのDSD方式を取り入れたんです。
ところが、DVD-Audio陣営の中心となった東芝はそこまでの考察がなく、大容量のDVDでCDの情報量をさらに多くしようとした。
CDを開発したソニーがCDを否定してDSDを進め、CDをやっていなかった東芝がCDに憧れて(ビジネス的には特許料収入が欲しい)CDの拡張をしたという流れがあって、今に至るんです。
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