ソフトバンク 孫 正義社長 写真:編集部
ソフトバンクが「シュレック」「カンフーパンダ」などを手がけた米映画会社ドリームワークス・アニメーション買収に向けて交渉を進めていると、ロイターなど複数紙が報じている。ドリームワークス・アニメーションの時価総額は約19億ドルで、米映画週刊誌ハリウッド・リポーターによれば提案額は総額34億ドル(約3700億円)。
ドリームワークスの直近売り上げはアジア(日本)を含む海外比率が高く、米国内の売り上げ45.7%を54.3%で8.6ポイント上回っている。なお本件についてソフトバンク広報はノーコメント。
買収交渉が事実とすれば、狙いはコンテンツ強化による差別化とみられる。
ソフトバンクは2013年7月に米通信会社スプリントを216億ドルで買収。さらに米通信会社Tモバイルの買収も進めていたが、8月には交渉が中断されている。一方、2013年10月にはフィンランドのモバイルゲーム会社スーパーセルを15.3億ドルで買収。ソフトバンク傘下のゲーム会社ガンホーと合わせて、通信インフラ上での収益化、競合との差別化につなげるべく、コンテンツ企業を次々と手中におさめている形だ。
ソフトバンクと同じく、競合もコンテンツの獲得に動いている。ダウ・ジョーンズによれば、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズも先月、2015年半ばまでにコンテンツを配信するウェブサービス開始を考えていると投資家会合で明らかにしたばかり。ドリームワークス・アニメーションもベライゾンと交渉を持っていたという。
インフラ、プラットホーム、メディアの勢力図は、通信環境の進化とともに変化している。
2009年からドリームワークスと提携、映画を配給してきた映画スタジオ最大手のディズニーは、アップルと組んで映画配信用プラットホーム「ディズニー・ムーヴィーズ・エニウェア」を運用している。アマゾンは2010年に映画製作スタジオ「アマゾン・スタジオ」を立ち上げ、4本のオリジナルドラマを制作中だ。
YouTubeのように、電話やメールとは比べものにならない通信帯域を必要とする動画データをモバイル回線でやりとりされるのは、通信会社にとってみればいい迷惑だ。だが動画コンテンツは今後、高い確率でドル箱になる。2020年までにYouTubeの売り上げは2兆円を超えるとも言われている。ウェブ時代のエンターテインメントをどこが握るかは、投資家ならずとも注目を集めるだろう。