2014年9月14日「THE BIG PARADE 2014」で、米ユニバーサルミュージックインターナショナルでデジタルビジネスをフォローするサイモン・ワット(Simon Watt)が講演した。
Simon Watt, Universal Music International 写真:編集部
サイモン・ワットによれば、米国の音楽産業でCDやレコードのようなアナログ商品が占める割合は3割で、7割はすでにデジタル化されている。デジタルもダウンロードからストリーミングや定額配信に移っている。
なかでも北欧スウェーデンでは、国内で流通する音楽の82%がデジタル化されている。
うち78%がストリーミングで、4%がダウンロード。同国は2013年時点で年間約10億ドルの利益をあげるストリーミングサービス「Spotify」が生まれた国でもある。ストリーミング文化はスカンジナビア半島をつたい、ノルウェー、デンマーク、オランダ――と、欧州にも影響を与えはじめているそうだ。
定額配信やストリーミングにおいて、音楽レーベルが必要とするのは顧客情報だ。
「サブスクリプション(定額配信)により、どのファンがどの音楽を楽しんでいるかをよりよく把握できるようになり、ファンの行動様式が見えるようになった」
ただし、定額配信はあくまで売り場の1つでしかない。1つの事業者に頼りきりにならず、多様性を持たせてリスクヘッジしなければ危険も伴う。出版社がアマゾンとの関係に苦慮しているように、配信事業者側が強くなっていくほど、メーカーの意向どおりに音楽を売れないケースも出てきてしまう。
「パートナーの戦略が変わり、自社のキー・サービスが宣伝されなくなってしまったこともあった」(ワット)
一方、日本やフランスではいまだにアナログ商品が強い。
楽曲を提供するサービスを慎重に選び、あくまで自国企業が自国顧客に向けた音楽を売りつづけている状態だ。日本ではTSUTAYAのようなレンタルの影響も大きい。しかし日本人には音楽をモバイルデバイスで持ち歩く習慣がある。ウォークマンがそうであるように、「日本は常にモバイルから生まれてきた国」(ワット)だ。
「(世界的に)モバイルファーストになり、モバイルがプライマル・プラットフォームになってきている。音楽がどこにいても日常生活の一部になるように、ほかの国が『日本化』してきているのではないか」