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50倍の結果を出すオムニ広告

2014年08月25日 07時00分更新

文● 北島幹雄(Mikio Kitashima)/アスキークラウド編集部

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「オムニチャネルはバズワードだが、これで売り上げが上がっていますというのは、まだITコンサルタントだけ」と、オプトのメディア開発・アドテクノロジー・データベース担当の八田 浩執行役員は言う。SIerがオムニチャネルの推進に前向きなのは、当然IT開発の売り上げがあるからで、マーケティングではっきりとした効果を出せている企業はまだまだ少ない。

 オプトは提携する米国のRetailigence社と共に、企業の持っている店舗所在地・商品・在庫などの自社データを預かり、顧客情報を店舗情報に割り当てる、IDマーケティング広告を2013年7月より販売している。スマートフォン(スマホ)へのウェブやアプリ内広告で、スマホから判別した位置情報と近隣店舗での販売在庫を掛け合わせ、自動的に最適な内容を生成するバナー広告を配信する仕組みだ。

「広告主からすれば、今までのマーケティングで位置情報の設定はできたが、配信内容は出し分けられなかった。店舗在庫のあるなしを動的に判断して、位置情報から適切なクリエーティブの自動生成ができる」

位置情報から適切なクリエーティブを自動生成する

 近ければ近いほど効果的で、半径5km円でやるより3km円のほうがクリック率は高くなる。雨の日はECサイト利用率が上がるように、気象データと合わせると結果は格段に高まるともいう。「クリック率は、通常と比べて10倍くらい違う。相性がいい業種だと40~50倍にもなる」


位置情報の価値はブラウザーのクッキーや会員情報に並ぶ

八田 浩氏

オプトのメディア開発・アドテクノロジー・データベース担当の八田 浩執行役員

 ブラウザーでの行動履歴やポイントカード利用履歴、そのほかソーシャルアカウントでの履歴と同様に、位置情報も実店舗の情報を掛け合わせることで価値を持つ。当初は流通・量販店向けの広告サービスだったが、ビジネスホテル・旅行代理店・不動産・レストランなど、実店舗に来訪させたい業種の反響があったと八田氏は語る。

 位置情報と聞くとGPSでのデータを想像するが、実際は検索エンジンでの「市ヶ谷」といった入力履歴、ブラウザーのクッキー、さらにはIPアドレスでもスマホの位置は推測が可能だ。検索だけでなく、地図や天気アプリなど位置情報がとれるアプリでの普及を進めている。

 オプトが次に狙うのは、商品ロケーション広告だけでなく、顧客情報とひも付いた広告配信プラットホーム作りだ。「ECも実店舗も問わず、あらゆる顧客に対するオムニチャネルプラットホームを実現させるためのデータベース広告出し分けはできてきた。次は、ウェブ側・店舗側ともに、オンラインとオフラインでの顧客情報の結合を進めたい」

 米国の家電量販最大手のベストバイでは、自社の在庫情報や店舗情報などのデータを、外部開発者が利用可能なインターフェイスとして提供するなど、すでに企業同士のオープンなデータ交換の事例があるが、日本の場合、コンビニエンスストアやスーパーなどの大手小売業のデータが企業間の壁を越えて結びつくまでには至っていない。そのため、国内の場合はいかに自社完結したプライベートなデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)の構築ができるかが課題だ。商品情報と位置情報だけを使ったただのエリアマーケティングではない、DMPでの顧客データ統合こそが、オムニチャネルの明確な成果といえるだろう。

 利用者をトラッキングして、興味・関心が高い最適化されたパーソナライズな広告は、世界的な潮流だ。オプトが目指すのは、ウェブ上でのクッキーをベースにした動的なDMPをさらに進化させたものだ。位置情報だけでなく、POSシステムやポイントカードなどの実店舗ベースでの購買情報も合わせ、より効果的なトラッキングを模索する。グーグルやアップル、マイクロソフトなどによるブラウザーのクッキーに代わる新たなユーザー識別手段の開発が報じられるように、リアルでも将来の激戦は必至だ。

 今後は予測モデルをより精緻にするほど、利用者と店舗の結び付きは強まり、広告の価値は上がっていくと八田氏は語る。「オムニチャネルのシステム投資は終わり、次はマーケティングにまわるはず。今はタイミングを待っている時期」

アスキークラウド2014年10月号」の特集「スターバックスに学ぶ完璧なオムニチャネル」では、スターバックスの実践するビジネスモデルこそが、24時間365日どこでも接点を持ち続け、意識させ続けて購入機会を増やすオムニチャネル施策であるとして、勝ち残る企業の創意工夫に迫っている。


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