アベノミクスの「日本再興戦略」の中で、東京オリンピックが開催される2020年には、健康予防関連市場は10兆円へ、医療関連産業の市場も16兆円に拡大するとされている。また、先日Appleから発表された「i OS 8」では、健康管理アプリ「Health」と併せて、「HealthKit」という新しいAPIが提供されるという。デベロッパーはこのAPIを通じて、各ユーザーの健康データベースと自分のアプリとを接続させられるようになり、健康・医療分野とITの連携は今後ますます進んでいくはずだ。
ところで、ソニーは健康・医療分野で昨年4月、オリンパスとの共同会社ソニー・オリンパスメディカルソリューションズを設立したものの、あまり音沙汰がない。しかしイスラエルの現地経済誌グロービス(Globes)が伝えたところによると、その後にソニーは、イスラエルの医療系投資会社レインボー・メディカル(Rainbow Medical)へ1000万ドルを投資している。
レインボーメディカル社は、現在12の医療系会社に投資を行っている。同社は、10億ドル以上の市場規模を持つ医療系分野を分析し、そうした分野へ向けて製品を開発する会社を支援。その市場とは、10億ドル規模の筋腫(Fibrids)、15億ドルの心房細動(Atrial Fibrillation )、50億ドルのうっ血性心不全関連(Congestive Heart Failure Ckass )、90億ドル規模のグルコースモニタリング(Gulcose Monitoring)、100億ドルの末梢神経因性疼痛関連(Peripheral Neuropathic Pain)と視力回復(Sight Restoration )、抵抗性高血圧( Resistant Hypertension )、100億ドル以上の皮膚・美容関連市場(Dermatology / Aesthetics)──だ。
同社では、こうした市場ではまだまだ課題が残っていると判断しており、イノベーションが起こると考えている。
さて、前述のとおりソニーは投資会社を通じてイスラエルの医療ベンチャーへのアクセスを図っている。アベノミクスを担う医療分野の新製品には、今後イスラエル生まれの技術が存分に入ってくるかもしれない。
筆者紹介──加藤スティーブ
イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40〜60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。
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