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スマートフォンのキルスイッチは消費者の財産を守れるか

2014年04月15日 18時12分更新

文● Dave Smith via ReadWrite

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すべてのスマートフォンにキルスイッチを導入すれば、消費者の出費を抑えるだけでなく、盗難や暴力からも守ってくれるだろう。

Kill Switch

議会や携帯電話キャリアは一様に、すべてのスマートフォンでの「キルスイッチ」の標準化を推し進めている。「キルスイッチ」は盗まれた電話を泥棒が使えないようにするためのものだ。ある統計学者は、スマートフォンの盗難に対するサポートがまだ十分でないのだとしたら「キルスイッチ」のような手段が人々の、特に消費者の財産を守れるのではないかと考えている

データサイエンスと分析を専門とするクレイトン大学の准教授、ウイリアム・ダックワースは、スマートフォンの「キルスイッチ」によって、何十億ドルとは言わないまでも、何百万ドルという単位でアメリカの消費者の財産を守ることができるのでは、と思い付いた。保険料の大部分を削減できるからだ。

ダックワースによれば、アメリカの消費者は盗まれた電話を買い替えるために毎年約5億8000万ドルを使っているが、その額は、消費者が携帯電話のために支払っている保険金に比べれば、ごくわずかに過ぎない。保険金の額は、毎年48億ドルだ。

キルスイッチは盗んだスマートフォンを売買するビジネスを崩壊させることができ、消費者は盗まれた電話の買い替えに毎年5億8000万ドルも費やす必要がなくなる。しかしダックワースは、盗難保証のないもっと安い保険プランに切り替えることができれば、消費者はさらに20億ドルの出費を抑えることができると予測している。

ダックワースは、たとえ「キルスイッチ」が設置されても、全ての消費者が盗難保証のない保険プランに加入することはないだろうと語ったが、2月に1200人のスマートフォンユーザーにアンケートを実施したところ、大多数が「キルスイッチ」を実際に支持していることが判明した。アンケート調査によればほぼ全員が、各キャリアは盗まれた電話を「キルスイッチ」を使って使用不能にするべきだ、と考えており、回答者の83% がキルスイッチはスマートフォンの盗難を減らすのに役立つと考えていた。

「かなりの回答者がキルスイッチを肯定すると予想していたが、思っていたよりもその割合が大きかったので少し驚いた」とダックワースは PCWorld のインタビューで語った。彼は次のように続けている。

「私は、クレジットカードの紛失と同じ視点で考えている。カードを盗まれたり失くしたりした場合は、クレジットカード会社に電話をし、そのカードを無効にして新しいカードを再発行してもらうことができる。それなら安全だ。私のスマートフォンには大量の情報とアカウントが入っている。だからもしもの場合はキャリアに電話をし、『停止してくれ』と言えばよい、という考えはとても理に適っている。」


スマートフォンのキルスイッチは実現可能か?

ダックワースの報告はキルスイッチの実現に役立つはずだが、議会はまだ CTIA から抵抗を受けている。CTIA は電気通信業界を代表するロビイストで、スマートフォン向け保険を扱う企業の代表が2人、その役員会に属している。

CTIA はスマートフォン盗難への対処について、別の考えを持っている。盗まれた電話を個別に無効化するかわりに、盗まれた電話が新しい持ち主によって再アクティベートされるのをブロックできるデータベースを提案しているのだ。ただ残念ながらそのデータベースには、一部の国でしか機能しないという弱点がある。言い換えれば、電話を盗んだ者がそれ以外の国に行ってしまえば、CTIA はその電話の再アクティベートをブロックできないのだ。

CTIA は、システムの適用範囲が国際的に広がればこの弱点はなくなるだろうと言っているが、スマートフォンとモバイルデバイスの盗難が増えていることは明らかだ。サンフランシスコ地方判事のジョージ・ガスコンは、「警察機関のデータ」を引用して、ニューヨーク市の盗難事件は約20% がスマートフォンを狙ったもので、サンフランシスコだとその割合は50% に跳ね上がる、と指摘している。世界的にも問題になっており、ロンドンでは毎月1万台のスマートフォンが盗まれていると報告されている。

「つまるところ、アメリカ人がキルスイッチを必要としていることは明らかだ。キルスイッチを業界全体で導入することで治安が大幅に改善され、毎年何10億ドルもの消費者の財産を守ることができるはずだ」とダックワースは彼の研究で結論付けている。

ただし、議会がすべてのスマートフォンにキルスイッチを導入することを承認した場合でも、「キルスイッチ」が追加料金の必要なオプション機能になることは望ましくない。ダックワースのアンケートでは、93%の人々がキルスイッチに追加料金を課すべきではないと回答している。

ガスコンのようなキルスイッチの支持者は、それがお金だけでなく命をも守ることができる、必要不可欠な対策だと信じている。消費者レポートによれば、2012年には160万人のアメリカ人がスマートフォンのために盗難の被害にあっており、中には命を奪われた人もいるということだ。キルスイッチはセキュリティ強化手段であると同時に盗難と暴力の強力な抑止力にもなり得るため、消費者は安心してスマートフォンを所有できるようになるだろう。

「(ダックワースの)調査は、私たちが以前から気付いていたことが事実だったと証明した。つまり、すべてのスマートフォンへの盗難抑止技術の導入は、ワイヤレス端末のユーザーに大きなメリットをもたらす」とガスコンは言っている。「金銭的なメリットだけの話ではない。この技術をすべてのスマートフォン導入しないことで発生する人的被害というのは非常に深刻なのだ」


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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