技術立国日本という言葉が持てはやされたのは、ずいぶん昔のことのようだが、日本のものづくりやテクノロジーのレベルが、決して低くなったわけではない。日本には、将来、世界を驚かせる可能性を秘めた、若き研究者やエンジニアがたくさん存在するのだ。そこでこの連載では、筆者がスゴイと感心した若き研究者やエンジニア達を紹介していくことにしたい。
移動ロボットの根元を究めながら
ユニークなロボ用プログラムを開発する凄腕研究者
1回目は、筑波大学 システム情報工学研究科 知能ロボット研究室の博士課程をこの春卒業した渡辺敦志さんにスポットを当てたい。
渡辺さんが所属する知能ロボット研究室のテーマは、「自律的に動いて人間生活をサポートするロボットのための技術の研究・開発」。要は、ロボット専用レーンを作って行動させるのではなく、すでに人間が生活している環境下でロボットを役立たせようというものだ。
自転車専用レーンの新設すら難しい日本の街中で、新たにロボット専用の空間を作るのは困難だろう。
ゆえに、普段から我々が使っている歩道や階段を共有できるロボットを作ろうというのは、極めて現実的な路線といえよう。
そんな研究室のテーマを具現するようなイベントが「つくばチャレンジ」。これは本研究室のボスであった油田信一教授(定年退職され、現在は客員研究員として在籍)が提唱して始めた、人間が生活するリアルワールドで自律的に動くロボットの実現を目指す技術チャレンジであり、2007~2012年に第1ステージが実施された。
筆者は、当初からつくばチャレンジを取材しており、毎年優秀なロボットを送り込んでいた知能ロボット研究室には、前々から興味があったのだ。
一方、3月上旬頃にTwitterやFacebook、まとめサイト等で筑波大学謹製のポスターが軽く話題になったことを覚えている方も多いだろう。
筑波大学では、大学ブランディングプロジェクトの一環として、2010年度から学生に大学のイメージポスターを製作させている。このポスターは写真やコピーが秀逸で、ネットでも度々注目されている。
例えば、2011年度に製作されたポスターのコピーの1つは、「大学なのか、森なのか。」で、まさに森のような緑にあふれた広大な大学敷地を分かりやすく表現している。同じく、暗い廊下で学生が移動ロボットの前にしゃがんでいる姿を撮ったものもある。コピーは、「燃料は失った睡眠時間。」というもので、これもとても優れたコピーだ。
何を隠そう、この写真の学生こそ、今回お話を伺った渡辺敦志さんその人であり、一緒に写っているロボットも、渡辺さんがメンテナンスしながら使ってきたものなのだ。
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