3.25%という低い加盟店手数料、指定銀行なら翌日入金、全国のローソン店舗でリーダーを実質タダで販売と、常識破りのサービスを繰り出す米国発のモバイル決済サービス・Square(スクエア)。5月のサービス開始当初から翌日入金は三井住友銀行に口座を持つ事業者に限られていたのが、9月18日からみずほ銀行の口座を持つ事業者も対象となった。
日本の個人消費を見たとき、決済手段の主流はいまだ「現金」だ。日本における現金他の割合は56%と高いのに対し、クレジットカード決済は12.1%どまり(2011年度。クレディセゾン2012年度決算説明会資料より)。日本で進まない理由の一つとして挙げられるのが加盟店への負担だった。
クレジットカード決済は、現金を取り回す煩わしさが不要になる反面、導入に相応のコストがかかる。読み取り端末の導入に10万円前後かかり、決済手数料は業種によっては数%以上。特に厳しいのは、材料を現金で仕入れる飲食業のような「日銭」が求められるビジネスだ。カード会社から加盟店への入金は大体15日〜45日間隔で、その間は手持ちの現金でまかわなければならない。
例えば結婚式の2次会などで、会費として徴収した現金を終了後にそのままお店の人に代金として支払う、なんて光景を見たことはないだろうか。「貸し切りパーティーが何日も続くと持ち出しばかりが多くなり、(入金の遅い)クレジットカード決済では厳しい」(関係者談)ことも伺える一例だ。
現金仕入の事業者にとってはまさに福音の翌日入金サービス。スクエアも、今回のみずほ銀行対応の理由を「スピーディーな入金サイクルが事業者に好評」としている。
だが、スクエアが翌日入金したからといって、クレジットカードで決済した利用者から翌日に引き落とせる訳ではない。大概、毎月締めの翌月払いだ。その間、誰が負担するのか?
また、加盟店手数料は3.25%だが、クレジットカードの加盟店手数料は1社が丸々受け取る訳ではなく、カード会社やカードブランドと分け合うため、最終的にスクエアの手元に残るのはわずかだ。実質タダで販売しているリーダーの調達コストや、スクエアを裏で動かす決済システムの開発・運営費を併せて考えると「果たして黒字になるビジネスなのか?」という疑問が生じる。
9月24日発売のアスキークラウド2013年11月号ではこの謎を徹底解明。多数の関係者の証言を通して見えてきたのは、規模の大きさ・回転の速さで損益分岐点をものともしないスクエアのビジネスモデルの凄味と、そのようなスクエア流ビジネスで脅かされるクレジットカード業界の既得権益の姿だった。
150兆円規模と言われる日本の現金決済市場を狙うのはスクエアばかりではない。電子マネー事業者も線路網や店舗網を軸に日本全国に経済圏を広げ、携帯キャリアも決済サービスの拡充を図る。さらに今では初期費用10万円からでもオリジナルのスクエア(!?)が作れてしまう決済代行事業者のサービスも出ている。
2020年開催の東京オリンピックに向けて、海外からの観光客増加に備え、内閣府の経済財政諮問会議ではクレジットカード決済の利便性向上が検討課題として挙がっている。現金決済市場150兆円から続々と生まれるビジネスチャンスの最前線を、その目で確かめてほしい。
アスキークラウド11月号特集
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・発売:2013年9月24日(火)
・定価:650円(本体:619円)