アップルが減収にあえいでいる。スマートフォン(スマホ)の売れ筋が廉価機に移っているのが原因だ。「スマホの次」が望まれるなか、意外なプレーヤーがアップルを追撃する。
アイフォーンは売れているのに、利益が上がらない。これが、いまアップルが陥っている状況だ。
2013年4~6月期のアイフォーンの販売台数は、前年同期比20%増の3124万1000台。ところが、売上高は前年同期比1%増の353億2300万ドル(約3兆5200億円)にとどまり、純利益は前年同期比22%減の69億ドル(約6900億円)だ。
背景には、アイフォーンの利益率悪化がある。アップルのピーター・オッペンハイマーCFOによると、アイフォーンの平均販売価格は前年同期比で4%値下がりしているという。
原因のひとつは、併売を続ける旧機種のアイフォーン4だ。日本では店頭在庫のみの扱いで「再入荷の予定はほぼない」(ソフトバンクショップ担当者)モデルだが、米国や中国などではアップルストアで注文可能だ。
2世代前の製品なので、価格もこなれている。例えば中国では、新型のアイフォーン5が5288元(約8万6000円)からなのに対し、アイフォーン4は3088元(約5万円)で入手できる。
アップルのティム・クックCEOは「アイフォーン4は初めてスマホを買うユーザーを引きつけている」と話すが、低価格化競争に巻き込まれているのは事実だ。
日本では不動の人気を誇るアイフォーンも、中国市場でのシェアは5位。上位を占めるのはサムスンやファーウェイといったアジアメーカーで、特にファーフェイは2013年1~6月期の売上高が11%増の1138億元(約1兆8500億円)と好調だ。
一方で、スマホ市場の低価格化はデジタル景気自体の失速を引き起こす可能性がある。デジタル景気の先行指標とされる台湾の6月の海外受注高は、前年同月比3.5%減の351億ドル(約3兆5100億円)だった。
高価格帯のスマホが予想より売れず、組み立て需要が落ち込んだことが原因という。受注高を品目別でみると、情報通信製品は前年度比3.9%も減少している。
消耗戦になりつつあるスマホの次に来るデジタル機器は何だろうか。ひとつは「スマートテレビ」だろう。
アップルは「アップルTV」で、スマートテレビ市場を一歩リードしている。後を追うグーグルは既存のテレビをスマートテレビ化する「クロームキャスト」を35ドル(約3500円)で発売。低価格化で勝負に出る構図は、タブレット市場における「アイパッドミニ」と「ネクサス7」の姿に重なる。
そんな中で、中国のECサイト大手アリババがスマートテレビへの進出を発表した。独自のOSと接続端末(セットトップボックス)を開発したという。
スマホとは異なり、スマートテレビはまだ勝者が確定していない。利用登録者800万人を抱えるアリババが、先行するICT企業が作り上げたエコシステムを根底からひっくり返す可能性はゼロではない。