これまでにもiOSはメジャーアップデートを重ね続けてきた。「アイコンのデザインが微妙に変わった」「テクスチャーが変わった」「プリインストールアプリが増えた・減った・変わった」など、iOSは毎回人々の話の種となり、愛されてきた。
しかしiOS 7を見た今になってこれまでのアップデートを振り返ってみると、大幅な刷新は一度もされていなかったことに気付く。iPhone 3Gの頃に比べればUIは洗練を極め、使い勝手も大きく向上したが、それはいわばLionからMountain Lionへの進化、あるいはWindows VistaからWindows 7への進化に似たものだった。
「iOS 6」と「iOS 7」の関係は、「Windows 7」と「Windows 8」の関係に似ているかもしれない。同じ名称を持ってはいても、設計思想自体が異なる別物なのだ。
大幅なUI刷新に戸惑った読者も多いことと思うが、フラットデザインはすでに我々の生活に浸透しつつある。有名なところでは「Windows 8」のモダンUIやGoogleの各種サービスが挙げられる。iOS版アプリ「Gmail」や「Chrome」もフラットデザインを取り入れている。
同社自らが「iOS史上最大の変更」と語るiOS 7。しばらくは多方面から様々な声があがりそうだが、「よりシンプルなUIになる」と考えれば実にアップルらしい試みだと思えてくる。
ハードウェアデザインでは、とにかく「シンプル」「洗練」という印象の強い同社の製品。今後同社はソフトウェア面でも「シンプル」を突き詰めていくのではないだろうか。
リッチデザインにも「視覚的な満足感の高さ」や「仮想的に実物を使用する心地良さ」といったメリットが多数あるが、フラットデザインを用いたUIは、解像度の変化に対応しやすいという特徴・メリットもある。
「iPhoneだろうが、iPadだろうが、iPad miniだろうが、このバーはグラデーションなしのこの一色だ! ボタンのアイコンは端のこのあたりだ!」ということができてしまうわけである。端末の解像度に依存しにくいUIは、実に現代向きだと言えるだろう。