ソーシャル、O2O、ビッグデータ──こうしたはやりのテクノロジーを使うだけでは、成功体験を導けない。ユニクロ子会社ジーユーは徹底的に顧客の目線に立つうちに、自然とO2Oという結論にたどり着き、会員3倍増に成功したという。
「O2Oは、メディアや技術ではなくサービス。お客様に感情や感動、驚きがなければならない。オンラインで無料クーポンをバラまけばいいということではありません」
4月23日、東京・秋葉原「スマートフォンアプリEXPO 2013」会場で、ジーユーのダイレクト事業部リーダー、萩原将人氏はぴしゃりと言い放った。
ジーユーは、ユニクロのファーストリテーリングとダイエーの共同出資で6年前に作られた子会社だ。位置付けは「ユニクロのやんちゃでかわいい妹」。ユニクロの開発力を生かし、価格をぐっと下げたファストファッションブランドを展開。「ユニクロにできないことをする」という触れ込みで、新しい顧客層を狙っている。
店舗数は現在、全国で約220店舗(今春30店舗開設)。昨年の売上高は580億円で、前年比180%に成長している。そして、成長の秘訣は「O2O」(オフライン・トゥー・オンライン)。顧客にクーポンアプリをダウンロードしてもらい、お店やイベントに来てもらうというものだ。
ジーユー心斎橋店の店頭イベント「生着替えファッションショー」(2012年9月)。こうしたイベントをアプリで告知している |
クーポンそのものが感動的でなければいけない
「なんだ、それは。エラそうなこと言っても結局クーポンバラまいてるんじゃないか」と思った人もいるかもしれない。しかしジーユーは、クーポンをただバラまいているわけではなく、確かな戦略に基づいて利用している。
まず、ジーユーはアプリを使った割引キャンペーンを1ヵ月に1度というハイペースで企画。例えば、1年に1度というローペースでは忘れられてしまうからだ。
そして、クーポンアプリには必ず「遊べるしかけ」を施している。「宝探しクーポン」はAR技術を使ってクーポンを探せる。また「モンスタークーポン」は、きゃりーぱみゅぱみゅが出演するCMと連動。「キュッキューと叫べ!」というアプリは、「きゃりー!」とスマホに呼びかけると、音声認識で画面のきゃりーが「呼んだ?」と返事をしてくれるといった具合だ。
これらのクーポンは、利用率が7~8割と通常のクーポンにくらべて非常に高い。店舗数を限定したGPSアプリ「シェイククーポン」の利用率に至っては9割を超えたという。
「ARとか、GPSとか、技術そのものはどうでもいいんです。GPSを使ったクリスマスクーポンは1日1回しか『クーポンチャレンジ』ができないのですが、それでもスマホを振ると鳴るという仕掛も用意しました。鳴らすだけのアプリを店内で楽しんでいただいているお客様もいらっしゃいました」
萩原氏は、感動や驚きが大切だと繰り返す。O2Oはサービスだ。だからクーポンそのものが楽しくなければならないし、店頭で使いやすいかどうかも考慮しなければならない。それが利用率の高まりにつながったのだという。
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