前回は「良いコンテンツ」を評価するための指標について検討しました。複数の指標を組み合わせることによって、コンテンツを企画したときの「狙い」を多角的に評価できるようになりましたが、過去のパフォーマンスの評価だけでは不十分。将来を予測し、次の一手を決められるような仕組みを定常的に運用したいところです。
そこで今回は、コンテンツへのアクセスが長持ちしているかを日々ウォッチし、既存コンテンツの効果を持続させるためのテコ入れを検討したり、次に公開すべきコンテンツの内容やタイミングを調整したりすることで、サイト全体の集客力をコントロールする方法について検討します。
知りたいこと=長持ちしているのか?
Webのコンテンツで難しいのは、効果(アクセス数)が長持ちしない点です。公開した直後の新規コンテンツは、トップページからリンクしたりメルマガで紹介したりすることで、ある程度のアクセスが集まります。ソーシャルで話題になり、アクセスが急増することもあるでしょう。
ところが、次第にアクセス数は減っていき、すぐに埋もれて消えてしまいます。ニュースのような一過性のコンテンツであればそれでも問題ありませんが、時間と労力をかけて作り込んだ蓄積型のコンテンツは埋もれさせずに長持ちさせたいところです。蓄積していくことで、相乗効果も見込めます。
二極化するコンテンツ
- 最初はアクセス数が増えても、次第に減っていき埋もれてしまうコンテンツ
- 地味に長くアクセスされ続けるコンテンツ
コンテンツを長持ちさせるためにできること
指標やレポートについて考える前に、そもそもどんな改善アクションが可能なのか、先に明確にしておきます。
- イマイチだったけれどもまだ可能性がある場合
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- 内容を更新または追記し、価値を高める
- トップページやメルマガ、ソーシャルなどで再フィーチャーする
- 無理そうな場合
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- あきらめて次はヒット率の高いコンテンツを早めに公開し、穴を埋める
- ヒットした場合
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- 次のコンテンツの公開を先延ばしする
- 関連コンテンツを公開し、相乗効果を狙う
効果が長持ちしているのかどうかの現状把握と、まだ持続しそうかどうかの予測、の両方を毎日簡単に確認できればよさそうです。
「コンテンツの長持ち度」を計測する方法
コンテンツの「長持ち度」を計測するために、以下のようなレポートをExcelで毎日自動更新できるようにしてみました。
各コンテンツの公開日を起点とし、公開からの経過日数ごとに左側に揃えて訪問回数を並べています。Excelの「条件付き書式」を使って、ゼロの値は文字をグレーにし、棒グラフも表示するようにしています。
青いバーの日ごとの減り具合を見れば、時系列トレンドのパターンが見えてきます。ただし、コンテンツが増えると目視で確認するのが大変なので、次のような指標を定義し、右側のセルに列を追加しました。
- 後半の伸び
- 公開直後の数日間を除く一定期間の合計訪問回数
- 持続率
- 「後半の伸び」を公開直後の2週間の合計訪問回数で割った割合
分析・対策した結果...
サイトを運営しながらこのレポートを毎日確認することで、実際に以下のような考察とアクションが可能になりました。
A. 可能性を早期に検知して長持ちに成功
たとえば、あるインタビュー記事は公開後の2日間はあまりアクセスが増えませんでしたが、3〜4日経ってもアクセスはあまり減りませんでした。そこで、一定のニーズがあって長持ちするはずという仮説を立て、トップページからリンクするようにしました。
この結果、公開後の4〜12日目のドロップ率が緩やかになりました。「長持ち」を表すために定義した2つの指標も高めの値を示しています。
ただし、A/Bテストをしたわけではないので、リンク掲載がこの「長持ち」につながっているかは分かりません。このような場合は、リンクごとのクリック数を調べられる機能が役に立ちます。
後半の伸びの約半分はこのリンクが貢献していたことが明確になりました。
B. ニーズを理解し企画に反映
単発イベントの告知ページは初日に伸びただけでなく、後半も長持ちしました。
このイベントは最初の2日間で満席になってしまったので、その後はこのコンテンツを目立たないようにしていましたが、それでもアクセスが長持ちするので、別のイベントの企画を開始しました。まだ空きがあるイベントの告知ページへ誘導したり、次回の日程が決まり次第メールでお知らせするフォームを設置する、という改善アクションが可能になりました。
C. 潜在的な良いコンテンツを隠し持っておく
以下のページは公開後の1週間でもっとも多くの訪問を集めたヒットコンテンツです。Facebookでもポジティブなコメントが集まりました。Aのコンテンツのように追い打ちをかけてさらに伸ばすこともできましたが、時間が経っても価値が下がらない汎用的な内容だったので、イザという時に使えるよう温存しておくことにしました。サイト全体のトラフィックは、増やしたり抑えたりと自在にコントロールできることが重要です。そのためのネタをいつも手元に持っておくと便利です。
まとめ
以上、コンテンツを公開したタイミングからの経過日数によるアクセスの増減に着目する分析方法について紹介しました。ツールが標準的に提供する「先週の人気コンテンツ」のようなレポートを眺めていても、このような洞察は得られません。
今回の分析は一例に過ぎません。何を知り、どんな改善アクションにつなげたいのかを整理し、そのために必要な指標とレポートについて考える、というアプローチをぜひ実践してみてください。
著者:清水 誠 (しみず・まこと)
Webアナリスト。1995年国際基督教大学を卒業後、凸版印刷やScient、Razorfishにて大手企業へのWebコンサルティングとIA設計に従事した後、ウェブクルーでは開発・運用プロセス改善、日本アムウェイでは印刷物のデジタル化とCMS・PIM導入、楽天ではアクセス解析の全社展開、ギルト・グループではKPIの再定義とCRMをリード。2011年9月に渡米、マーケティング製品の品質改善に取り組む傍ら、執筆活動も続けている。サンクトガーレン社外CMO、電通レイザーフィッシュ社外フェローも務める。