GoogleやYahoo!といったネット企業に比べて規模が小さく、印象の薄かったマイクロソフトの広告ビジネスが、Windows 8によって浮上するかもしれない。タッチパネル操作を前提としたWindows 8では、従来までのデスクトップアプリに加えて、「Windowsストアアプリ」が用意されている。Windows 8アプリは、JavaScriptやHTMLでも開発できるライトなアプリで、国内でも日経新聞電子版やニコニコ動画、クックパッドなどがすでにアプリを提供。マイクロソフトはこのWindowsストアアプリを対象に、「Windows 8アプリ内広告(仮称)」として広告を配信できるようにする。
アプリ内広告はiOSやAndroidといったスマートデバイス向けのOSではおなじみだが、PC向けのOSとして長い歴史を持つWindowsにとっては大きな挑戦だ。これまで「広告がないアプリ」に慣れてきたPCユーザーから反感を買う恐れもある。
そこで、Windows 8アプリ内広告では、「ユーザビリティを犠牲にしないように注意を払っている」(日本マイクロソフトの坂下洋孝 ディスプレイセールス&マーケティング部長)という。スマートフォンのアプリ内広告はヘッダーやフッターなどにオーバーレイで表示されることが多く、ストレスに感じることも少なくないが、Windows 8アプリ内広告の場合、タイル状に並んだコンテンツの1つとして表示したり、スワイプした画面の最後に表示したりといった工夫がされている。
広告をクリックまたはタップすると詳細情報がアプリ内で展開するのも特徴だ。米国では、ブラウザーに遷移せずに動画を再生したり、インタラクティブなコンテンツを表示したり、といった事例が紹介されている。
Windows 8アプリ内広告ではユーザー層によるターゲティングはできないという。「自分のPCのデータが使われているのではないか、と不安に感じるお客様もいる」(坂下氏)ことから、あくまでもアプリやカテゴリーをターゲットに配信する。アプリのコンテンツと広告の関連性も重視しており、広告掲載基準は相当厳しいものとなるそうだ。
Windows 8アプリ内広告の国内展開の時期は未定だが、米国ではすでに一部のアプリで配信を始めており、国内でも準備は進めているとのこと。Windows 8が本格的に普及し、広告媒体としての価値が高まるまでには少し時間がかかるだろうから、そのタイミングを計っているのかもしれない。