オーディオ特性も音漏れ低減に寄与?
次にイヤホン本体の性能も気になるところ。ここは専用の計測器が必要なため、プロ用イヤーモニターの「FitEar」でおなじみ、須山歯研(http://fitear.jp/)の須山社長に計測をお願いした。
(※耳型を採取して作るモールド整形のカスタムイヤーモニターで有名。最近では「FitEar TO GO」シリーズのように、耳型採取を必要としないイヤーチップを使ったカナル型イヤホンも製作している。(関連記事)
計測結果に関する須山社長の所見は「音質バランスとしては従来のApple Earphoneに軍配が上がりますが、耳への収まりという点ではサイズと形状、また音の出力方向が鼓膜に向け規制されているため、従来のものが収まりにくかった方には歓迎できる改善点になっているかと思います。また騒音環境でのS/N比改善や音漏れの防止にも若干貢献しているかもしれません」とのこと。
特性に関しては実際に聴き比べた印象の通りで、その違いも音漏れの抑制に効いているように感じた。実際に電車内で聴き比べてみると、低音が従来型に比べるとしっかりと出るEarPodsは、騒音にマスキングされにくく、結果的にボリュームを上げずに済む。
世界のあらゆる人間が使うのが前提の設計と考えれば
なかなかいい出来のイヤホンではないか?
遮音も音漏れも、カナル型の方が優秀なのは間違いないが、人種によって耳の穴の形やサイズも違えば、その装着感を嫌う向きもある。AppleのiOS機器を購入するだけの財力を持った、世界中の人類が等しく使うイヤホンとしては、何の説明もなく使えて、安く上げられるデザインでなければならない。
イヤーチップのフィッティングをユーザーに委ねるカナル型というのは、標準同梱品としてあり得なかったのではないか。そういった制約を踏まえた上で言えば、EarPodsは相当いいところまでいっていると思う。
ただし、以前に比べると音漏れは低くなったというだけで、まったくゼロになったわけではない。あなた自身のためにも、そして周囲の人達のためにも、ボリュームの上げ過ぎにはご注意を。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。