2D動画のリアルな3D化も可能
前述のとおり、AS5745DGは3Dステレオ表示に、NVIDIAの技術「3D Vision」を使用している。3D Visionは120フレーム表示/秒の液晶ディスプレーによって、右目用と左目用の画像をフレームごとに切り替えて表示し、それを付属の液晶シャッター方式3Dメガネで視聴するフレームシーケンシャル方式を用いる。表示が3Dモードになると、液晶パネル上部にある赤外線発信部から信号が発せられ、3Dメガネがそれを感知してフレーム切り替えに同期する。
3Dメガネの視野は、普段はほんのりと暗い程度だが、液晶シャッターが動作すると人の目ではとらえられない速度で明暗を繰り返すため、視角全体の明るさがほぼ半減するように感じる。やや液晶シャッター部が小さいため視界全体をシャッターが占めるわけではないが、比較的軽いためフィット感は良好だ。なお、3Dステレオ表示時には、液晶ディスプレーの明るさも自動的に調節されて明るくなる。
AS5745DGでの3D動画の表示は、専用プレーヤーソフトの「Acer Arcade Deluxe」を使う。対応メディアはBlu-ray 3Dのほか、サイドバイサイド、オーバーアンダー(トップボトム)、マルチプルビューなどの映像フォーマットで記録された3Dファイルである。2D動画の3D化(2Dモノスコピック)も可能で、DVDビデオや既存の動画ファイルをリアルタイムに3D変換して表示できる。
手元の動画ファイルからいくつか試してみたところ、mp4およびflv形式のビデオファイルは「2Dモノスコピック」を選択すると、3D化できた。以前のレビューで、AMDのMobility Radeon HD5730を搭載したMSI「AE2420 3D」の3Dステレオ表示機能を試した時には、3D変換のリアルタイム処理能力の関係からか、HD解像度の2D映像は3D化できなかった。だが、3D Vision+Arcade Deluxeでは、フルHD解像度のmp4動画の3D化も可能だ。
AMDの3Dステレオ化処理と比べると、左右像の輪郭が明瞭ではなく、ややぼやけた感じになることもあるのだが、3D化アルゴリズムの関係なのか、Arcade Deluxeの表示は非常にリアルに見える。特に人物が映っているものだと驚くほどで、ディスプレーの中に人が存在するようにも見えてしまうほどだった。
そのほかにも、Arcade Deluxeでは写真や音楽の再生も可能で、動画再生はパソコン内のビデオファイルのほか、YouTubeアクセス機能もある。しかし、これらの3D化には対応していない。2D/3D変換時の設定変更時や、3Dステレオ表示切り替えに3~5秒の時間がかかったり、動画ファイルのライブラリ管理機能もないなど、全体として3Dステレオ表示のためだけに慌てて用意した印象がぬぐえないのは残念だ。
3D写真に関しては、3D撮影対応デジタルカメラなどで撮影したデータを、そのままフレームシーケンシャル方式の立体写真として表示できる「3D Vision Photo Viewer」も付属する。こちらも、表示のみのシンプルな機能しかない。
なお、今回は試用機のため付属していなかったのだが、製品版には3Dモデリングソフト「Shade」で作成した3Dデータや、Google SketchUp形式の3D CGデータを読み込める立体視コンテンツビューア「Shade 3D ブラウザ」がバンドルされる。
★
AS5745DGは「3Dを、より身近にする」ことを目的に、戦略的な価格で投入されたものだ。そのため3Dステレオ表示に関わる、120フレーム/秒の倍速液晶ディスプレーやGeForce GT 425M、3D Visionの3Dメガネ付属、Blu-ray 3D対応のBDコンボドライブ内蔵を除外すれば、「Aspire AS5754-A54E/K」(価格は7万4800円)とほぼ同じ仕様である。AS5745DGの実売価格が9万9800円前後なので、2万5000円ほどの追加で3D化が実現されたことになる。
この値段を安いと見るか高いと見るかは、3Dステレオ表示への興味にもよると思うが、世間で騒がれている3Dがどんなものなのかを体験するには最適な製品だろう。
AS5745DG-A54E/L の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-460M(2.53GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | GeForce GT 425M |
ディスプレー | 15.6型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | HDD 640GB |
光学ドライブ | BDコンボドライブ |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0 |
インターフェース | USB 2.0×4、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅379×奥行き250×高さ31.9~57.7mm |
質量 | 約3.0kg |
バッテリー駆動時間 | 約4時間 |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit版 |
価格 | オープンプライス(予想実売価格 9万9800円前後) |
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筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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