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Twitterだけじゃない、エンゲージメントの本質 (1/2)

2010年08月17日 10時00分更新

文●ロフトワーク

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ソーシャルメディアの台頭とともに注目される「エンゲージメント」という概念。従来のオンラインマーケティングの常識を変えようとするエンゲージメントとは何なのか? なぜいまエンゲージメントが求められているのか? そんなWeb担当者の疑問に答えるべく、3人のプロフェッショナルによる座談会が実現。キヤノンマーケティングジャパン コミュニケーション本部ウェブマネジメントセンター所長の増井達巳氏、NECビッグローブ ビジネスサービス事業部 部長の山本隆範氏、ロフトワーク代表取締役の諏訪光洋氏が議論しました(モデレーターはWeb Professional編集長の中野克平)。


エンゲージメントはマーケティングに限らない

――おそらく「エンゲージメント」という言葉を正しく説明できる人は少ないと思います。

諏訪:もともとは「パブリックエンゲージメント」。米国のマーケティング会社、PR会社を中心に広がった概念で、ステークホルダーに何を約束し、何を実行するかを明確にしましょうという考え方からスタートしています。Webをきっかけにステークホルダーとの直接的なコミュニケーションが可能になるにつれ、製品情報に限らず、企業として何をどう表現し、発信すべきかを考える機会は増えつつあります。

増井: 単なる関係ならリレーションですが、もう少し上位の概念ですね。マーケティングやWebの施策によって相手との接点「きずな」を見出し、ロイヤルティの向上やリレーションの構築が実現する、あるいはモチベーションが上がるなど、「きずな」を深めることで、そこに何らかの変化が生まれるようにすることがエンゲージメントの手法です。

 もともとマーケティングに限定した言葉ではなく、会社の経営者と社員との関係でも使われます。たとえば、経営者が発信した情報をウォーターフォール型で下へ下へと伝える方法では、情報は伝わっても「きずな」は生まれませんが、社員向けのコミュニティやSNSを活用することで、縦・横の関係において社員相互の「きずな」を深めることが可能です。

諏訪: 1つ良い例があります。当社でサイトリニューアルをお手伝いしたレナウンでは、ECサイトのスタートにあたり、販売の現場の抵抗感が非常に強かったんですね。でも、いざ始めてみると、レナウンがどんなストーリーでラインナップを展開しようとしているのかが現場サイドに伝わりやすくなり、逆に現場の方から積極的にアイデアが出てくるようになったというのです。これも立派なエンゲージメントです。

山本: 当社が支援しているお客様の中にも、エンゲージメントを意識したサイトづくりや運用を実践している事例がいくつかあります。長く口コミの施策を実施してきたあるお客様では、意図的に口コミを起こすことの難しさに気が付き、エンゲージメントを中長期的な目標に据え、自然発生的に起こった口コミにきちんと耳を傾けることに注力されています。


ブロガーイベントで記事を書いてもらうやり方はもう通用しない

――でも、なぜ今までのやり方のままではダメなのでしょうか。

NECビッグローブの山本氏

山本: 10年前は情報発信にWebを使うことで、企業が満足していた部分があります。しかし、お客様自身がWebに情報を求めるようになると同時に、掲示板などで利用者の素直な感想や意見が書き込まれるようになり、企業からの一方的な情報を鵜呑みにすることはなくなりました。一時期「囲い込み」という言葉もキーワードになりましたが、顧客にしてみれば、囲い込まれるつもりなど一切ないわけで、企業がそういう意識でいると失敗すると思います。

増井: お客様がWebというメディアを持ったことが変化のきっかけでしょうね。モノを買う場合、お客様には文脈がある。そこに最近は口コミとか比較サイトといったソーシャルの場が出来てきて、かなりの位置を占めるようになっています。だから企業論理でマーケティング施策を打ってもダメ。企業がお客様の文脈に近づいたマーケティングをしない限り、受け入れてはもらえません。ブロガーイベントをやって記事を書いてもらってなどという、ソーシャルの場をメディア化する企業論理のやり方はもう通用しないのです。

 もちろん、情報を見てから店舗に行くことは今までにもありましたが、お店との間に「きずな」が生まれるケースは少なかったと思います。店舗に足を運んだ人が感想をブログに書いたとしても、それを見た人が情報として受け取るだけ。この繰り返しです。でも、たとえばTwitterで相互フォローしているお店に行くと、初めて行った客でも、すでにファンとして見てくれている。そこには、経験したことのない不思議な心地よさがあるわけです。これが「きずな」ですよね。


「Webエンゲージメント」をテーマにした連続セミナー開催決定!

ロフトワークトNECビッグローブは、「Webエンゲージメント」をテーマにした無料セミナーシリーズを9月~来年2月にかけて全5回の日程で開催します。9月2日に開催される1回目のテーマは「成果を上げるWebインテグレーション」。本座談会に登場したキヤノンマーケティングジャパンの増井氏が自社で培ったノウハウを、ロフトワークの諏訪氏がサイト設計のポイントを、NECビッグローブの山本氏がWeb基盤作りの事例を解説します。残席わずかですのでお早めに申し込みください。

⇒セミナーの詳細・申込み(ロフトワーク)
http://www.loftwork.jp/seminar/2010/20100902_biglobe1.html

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