「PDFから簡単にiPad向けの電子書籍が作れます」「マルチデバイスに対応した電子ブックビューアです」――そんな声が響く。7月8日、東京ビッグサイトで「第17回 東京国際ブックフェア」が始まった。今年の注目は何といってもiPadの登場で盛り上がる電子書籍・電子出版。同時開催の「デジタルパブリッシングフェア 2010」では、例年になく電子出版ソリューションをアピールするベンダー企業が目立ち、情報収集に追われる版元のデジタル担当者の姿が目に付いた。過去10年以上「来る」と言われ続けてきた電子出版の夢は、黒船到来をきっかけに一気に結実するのだろうか。
行列が絶えないグーグルブース、低価格・手軽さで攻めるモリサワ
会場でもっとも多くの聴衆を集めていたのは、グーグルのプレゼンブース。当日朝に「Googleエディション」が発表されたこともあり、少しでも説明を聞こうとする関係者で常にごった返していた。Googleエディションは、従来から提供している書籍検索サービス「Googleブックス」に購入機能を持たせたもので、Googleブックスで検索、試読して気に入った本の全文データを購入してブラウザー上で閲覧できる。米国では今年夏から、日本では2011年の年明けを目処に始める予定だ。
書体ベンダーのモリサワのブースでは、7月20日に発売する電子書籍ソリューション「MCBook」を展示していた。MCBookはAdobe InDesignのデータを電子書籍に変換するソリューションで、第1弾としてiPhoneに対応する(今後、iPad、Androidにも対応予定)。iPhone向けでは、コンテンツと独自のビューア、モリサワフォントを専用ツールでアプリとしてパッケージ化し、作成した電子書籍アプリはアップルのApp Storeを通じて販売できる(いわゆる「一体型」の電子書籍モデル)。初期費用は不要で、ライセンス利用料も年間5万400円(PC3台まで)と低く抑えた代わりに、アプリの販売価格のうち5%を版元がモリサワへ支払う仕組みだ。サブスクリプションとレベニューシェアを組み合わせることで、大がかりな投資に踏み切れない中小の版元にも受け入れやすいモデルを提案している。
セルシスとボイジャーの合同ブースでは、ケータイコミックでの実績が豊富な「BookSurfing」と「ComicStudioEnterprise」を中核とした電子書籍ソリューションを展示。単一のコンテンツ(原画)から、iPad/iPhone、ケータイ、ゲーム機と、マルチデバイス対応のデジタルコミックを作成する方法をデモしていた。画面サイズが大きいiPadでは見開き、小さいiPhoneやケータイではコマ単位、といった具合にデバイスによって見せ方を変えられるのも特徴で、画面の切り替え時には簡易的なアニメーションも付けられる。
国内メーカーの最新端末も参考出展
ハードウェアでは、NECがOSにAndroidを採用したタブレット端末「LifeTouch」を参考出展。7インチのカラー液晶を搭載した縦長の筐体はiPad/iPhoneの間のようなサイズで、タッチパネルとカーソルボタンの両方で操作できる。EPUBとPDFをサポートする電子書籍リーダーのほか、ネット端末やフォトビューアとしても使える。ただし、NECがコンシューマ向けに販売する予定はなく、出版社やカタログ通販会社など企業向けに販売する。企業側が自社のコンテンツやサービスをバンドルしてユーザーに販売もしくは配布するBtoBtoCモデルになるという。
富士通は、カラー電子ペーパーを使ったリーダー「FLEPia」を出展。参考出展の超薄型カラー電子ペーパービューアが一番人気だった。
東京国際ブックフェアは11日まで、デジタルパブリッシングフェアは10日まで、東京ビッグサイトで開催される。