太宰治ってどんなイメージ?
「拝啓、ジョン・レノン」ってご存じ?
真心ブラザーズの曲で、ジョン・レノンへのラブレターを読み上げる歌。中でも特に印象的なのは、ジョンの人となりを挙げていく下りで、ジョンは、変人で、非現実的な、ダサい中年だそうだ。
この人となりは、作詞者から見たジョンというよりも、人々の目に映っているジョンの人間像。正しくもあり、間違いでもある、一面的なジョン・レノン観である。
それでは、昨年、生誕100周年をむかえ、それを記念して著作が4作も映画化された作家・太宰治の一般的な人間像は?
――暗くて、弱くて、自殺願望が強いダメな中年
正しくもあり、間違いでもある、一面的な太宰の人間像。
このネガティブなイメージは、そのまま太宰作品に対する印象にもつながり、
「太宰作品は暗くて読みづらそう」
「すぐ死にたいとか言ってそう」
「そもそも近代文学って古くさいし、むずかしそう」
「ぶっちゃけ面白くなさそう」
なんて思って、読まずに敬遠している方も少なくないだろう。
そんな方々にこそ読んでいただきたいのが、この児童文庫。
ドラマチックで娯楽性にとみ、読みやすい短編ばかりを集めた「走れメロス 太宰治 名作選」だ。
友情と信頼をまもろうと命がけで走る青年の姿をえがいた「走れメロス」など、太宰の本当の良さがわかる、感動的な11の短編をあつめた本書。(コミカルなものからBL(!?)的なものまでラインナップ!)
数ある太宰本の中でも決定版とも言える書籍だ。
美少年すぎるメロス!
親友セリヌンティウスもビジュアル系!!
本書の挿絵担当は、なんと累計180万部の児童小説「黒魔女さんが通る!!」シリーズの人気イラストレーター藤田香氏!
カバー画を見てもわかるとおり、藤田香版のメロスは美形。そしてメロスのかわりに人質となる親友セリヌンティウスも別タイプのビジュアル系だ!
このメロスがセリヌンティウスのために、
私は、今宵(こよい)、殺される。
殺されるために走るのだ。
身代りの友を救うために走るのだ。(「走れメロス」より)
と独白して走るシーンはなんともドラマチック! 作品の華やかさが増す。
また、太宰作品は改行が少なく、一段落が何ページにもわたるため、一見して文字が詰まっている印象を受けるが、イラストがたくさん入ることで、読者が休み休み読み続けられるよう配慮した。
読み仮名ありの児童文庫だから
大人にも読みやすい!
近代文学を読んでいて挫折する理由として、難読漢字や、送り仮名が送られないことを挙げる人も少なくない。
本書は児童文庫のため、ほぼすべての漢字に読み仮名を振り、旧仮名づかいや旧漢字を新仮名づかいや新漢字に改め、必要以上に難しい、ごく一部の漢字を仮名表記にかえている。
また上述しているとおり、藤田香氏のイラストが入ることで、文字だらけのページばかりにはならずに息継ぎでき、おかげで挫折してきた大人にとっても驚くほど読みやすい。
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走れメロス 太宰治 名作選 (角川つばさ文庫)齋藤 孝、太宰 治(著)アスキー・メディアワークス
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