岐阜県羽島市の日本酒メーカー「千代菊酒造」は13、14日、酒蔵を一般公開した。このイベントにてiPhoneを使った酒蔵案内を提供しているというので、早速取材してみた。日本の伝統文化である日本酒造りと最新のスマートフォンは、どのような相乗効果をもたらすのだろうか?
伝統ある酒蔵と最新ITのコラボレーション
今回の酒蔵公開では、同社の看板銘柄「千代菊」の大吟醸、生原酒など7種類の試飲コーナーが設けられており、多くの参加者が飲み比べを楽しんでいた。このほかにも千代菊の酒粕を使った甘酒をふるまったり、日本酒を入れた足湯体験、酒器の展示販売を用意するなど、老若男女問わず楽しめる内容だった。家族連れで参加している人も多く、地域に愛されている酒蔵という印象を強く受けた。
酒蔵見学では、米磨きから麹付け、酒絞りに至るまでの全行程を見学できる。通常は社員の方が案内についてくれるのだが、ここに追加される形で実施されたのが、iPhoneを使った見学だ。
見学コースには各所にパネルが設置されており、このパネルの中にiPhoneの画面を押しつける。正しく認識されるとビープ音が鳴って、パネルの位置にあるコンテンツの解説が見られるようになる。
コンテンツにはテキストや写真、さらに動画も収録しており、最後まで読むと次のパネルのマークが表示される。もし異なるマークのパネルにiPhoneを押しつけても、次のマークは表示されない。
アプリの使用例
既存の電子ガイドシステムには、無線LAN/Bluetooth/赤外線といったワイヤレス通信や、GPSなどの位置情報を使って、展示物とその説明を結びつけているものが多い。しかし、今回は特にそういった機材を用意している様子ではなかった。一体どうやってマークから該当する説明を引き出しているのか?
実はパネルの画面を押しつける部分にはいくつかの突起物が埋め込まれており、これらの数と場所をiPhoneのマルチタッチ機能で認識することによって、正しい説明を呼び出すというものだった。
ネタが割れてしまえば非常に単純な仕組みだが、専用の機材などを用意せずに安価に、しかも十分な精度を持って識別できる。コロンブスの卵的なアイディアだと非常に感心させられた。ちなみに、この方式は特許も出願中だということだ。
アプリ自体のできもよく、ページ移動のフリックやボタンに対する反応も良好で、とても使いやすかった。筆者のようにiPhoneに慣れている人間だけでなく、あまりスマートフォンに慣れていなさそうな方が試している例も多かったが、ほとんどの人が操作に戸惑っている様子はなかった。
iPhoneによるガイドは、酒造りの行程に理解を深めるという目的を達するために、十分な効果があったのではないかと感じさせられた。
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