特集2回目と3回目でフロントサラウンドやバーチャルサラウンドをアナライズしてきたが、その高度な設計思想と音の良さに、家庭でのサラウンド再生には十二分なポテンシャルを備えていると改めて実感した。
しかし、同じ音楽を楽しむ手段として、どこにでも置けて気軽に心地よい音を鳴らすミニコンポもあれば、費用や設置に苦労するが異次元の音を聴かせるフルサイズのコンポもある、ということを忘れてはいけない。
また、サラウンドコンテンツを作成する側は、例外なくチャンネル分のスピーカーを立ててミキシングしている。我々ユーザー側も作成側と全く同じとは言わないまでも、それに近いセパレートシステムで再生し、その作品に込めた意図(音)を汲み取ることも大切だろう。そのコアとなるのが、サラウンド再生専用に作られたAVアンプである。
今回はまず、システムを設置する際の面倒な設定や、複数のスピーカーから音を出すときの位相の乱れを自動調整する機構などをいち早く開発し、文字通りサラウンド再生の開拓者となったパイオニアのアンプを例に、本格的なサラウンドサウンドを体験してみよう。
エントリーとは思えない性能! パイオニア「VSA-919AH」
今回試聴したパイオニアの「VSA-919AH」は、同社のラインアップの中では10万円以下の、どちらかといえばエントリークラスに属するモデルだ。しかし、その性能や機能は、いささかも現在市販されている製品の中にあって見劣りするところはない。むしろ、最新のAVアンプに要求される条件を全て備えた、スタンダードモデルと考えてもいいだろう。
まず、映画の制作スタジオでの音そのままとも言われる「マスターサウンド」を、完全に再現することができる「ドルビー TrueHD」や「DTS-HDマスターオーディオ」に当然対応している。
また、「ドルビーデジタルプラス」や「DTS-HDハイレゾリューションオーディオ」はもちろん、「DTS EXPRESS」や「ドルビーデジタルEX」「DTS 96/24」、地上・BSデジタル放送で採用されている「MPEG-2 AAC」音声など、現行のサラウンドフォーマット全てにフル対応しているのだ。
どんなBlu-rayソフト、DVDソフト、テレビ放送の音声でも、何の危惧もなしに再生できるというのは、この価格帯では案外凄いことなのである。逆に、接続するBD/DVDレコーダーなり、プレーヤーなりの資質が問われるほどだ。
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