機械的に数字を割り振るのでは、いけない
── 例えばフィルターのカットオフですけど、回していって切れる感じ──応答がものすごく自然ですよね。そういう演出もしているわけですか?
金森 そうですね。感覚的にオイシイと思えるようにしないといけません。機械的にリニアな数値を割り振っていくだけではなく、人間の感覚に合わせた調整が必要です。
── それが具体的に分かる部分はありますか?
金森 例えばDS-10の「VCO2 PITCH」(音の高さを調整するパラメーター)は±2オクターブ動くんですよ。でも(基本周波数に近い)センター付近はそんなに大胆には動かなくて、デチューン(微妙に異なる周波数の音が重ってできるうなり)がかかるように設定してあります。
── センターだけ効きが甘くなっていて、微妙に何セントかずれると。
金森 人間が微調整したい部分を探り当てて、操作しやすくしてあるんですね。また、オクターブはもちろん、3度(ドに対してミ)、4度(同じくファ)、5度(同じくソ)なんかはピッタリ合うポイントを作ってあります。パラメーター値は表示されませんので、音が合っているかどうかは人間の耳で判断しないといけませんが。
シンセサイザーをもっと手軽にしたい
── あ、そうだ今までにご担当された製品を教えてください。
金森 アナログ・モデリング・シンセのProphecyにはじまり、 Electribe、RADIASなど、いろいろな製品に関わりました。
── DS-10の満足度はどうですか?
金森 ニンテンドーDSの機能を限界ギリギリまで攻められたと思いますね。これはコルグだけじゃなくて、関わった担当者(キャビアさんやプロキオンスタジオさん)全員の努力の賜物なんです。インターフェースは静止画が中心になっていますが、これはグラフィックスに重い処理をさせないための工夫です。音は全部CPUの演算処理で作っているんですが、そのためのパワーを音のために空けておいてくれた。
── いろんな意味で新しい世代の楽器だと思うのですが、一番大きなエポックはゲームマシンのソフトということで、子供たちが手にするわけですよね。
金森 それは最初から狙っているところですね。シンセサイザーというのは、まだまだ一般には浸透していないという背景があって。KAOSSILATORもそうなんですけど、シンセサイザーを知らなかった人に広めたかったんです。
── 底辺を広げる方向で攻めているんですね。
金森 全部がそうではないですが、昔に比べると、より分かりやすい方向に行っているとは思いますね。それが裾野を広げるという効果を生んでいると思います。
── 僕の子供時代は、キース・エマーソンやリック・ウェイクマンが使っているのと同じモデルだから、という理由で具体的な製品に興味を持ったわけですが、今はYouTubeに上がっている動画で物欲をかき立てられたりするわけですよ。
金森 昔はそんな環境はなかったから、あり得なかったことですよね。
── 例えばdenkitribeさんの動画がそうなんですが、ああしたものが売り上げに影響を及ぼしているという実感はありますか?
金森 ありますね。身近なアーティストというのが変わってきているんでしょうね。そして昔と違うのは、作っている過程を流している人がいること。作っている過程を見ることで、これを買ったら僕もできるんじゃないかって。そういうメッセージが伝わっているんじゃないですか。
── なるほど。じゃあ我々も伝えていきましょう。
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