月刊アスキー 2007年12月号掲載記事
国内でさまざまクチコミサイトが立ち上がった2000年に、一見するとCGMとは正反対の手法でメディアを構築したのがオールアバウトだ。その道の専門家であるガイドたちが、顔出し実名で記事を公開する「ガイドサイト」は、旧来型の雑誌メディアのウェブ版と見ることもできる。
しかし、検索エンジンによって能動化するユーザー動向を予測し、ネットで集めた専門家を効率よく組織化した編集制作のシステムは、むしろウェブ2.0の時代を先取りしたともいえる。
知の偏在をフラットにして公正な市場を作る
創業者でCEOの江幡哲也氏は就職期に通信自由化の波が来たことから、メディアとしてのネットワークが世の中を変えると予感し、リクルートに入社。そして、ネットによって「人と人をつなぐ」ことに着目した。ファクス一斉同報サービス「FNX」を立ち上げてさまざまな業界の人に売り込んで話を聞いたことがヒントになった。
「多くの業界に、非合理や不合理がありました。必要な知識が伝わっていないからです。そこでネットの力で知の偏在をフラットにして公正な市場を作っていきたいと考えました」。そして、'96年にはブロードバンド時代を予見。「ユーザーが情報武装する。これは大きな変化でチャンスだ。そこに刺さるサービスは何か?」と考え、「ヒトネット構想」を作った。これがオールアバウトの原型となった。
「人は売り手側の意見よりも第三者、中立的な立場の人が言うことを信頼する」という発想は、現在のCGMによるマーケティングを先取りしていた。しかし、オールアバウトでは消費者参加型のコミュニティではなく、審査を通った専門家だけが「ガイド」として情報を発信できるようにした。
当時すでに匿名による誹謗中傷は大きな問題点だった。オールアバウトではガイドが写真で顔を晒し実名で記事を書くことを「絶対条件」として、信頼できるメディアを目指した。しかし、本当の強みは「続けてきた」ことだという。「個人ブログなら自分の庭だから好きなことが書けます。ガイドは最初にテーマを決めると、それ以外書くことはできない。7年もひとつのことを書き続けるのは大変なことで常に進化し続けているのです」。その努力が支持されているという。
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