塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第10回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
表現は「動」
2008年07月27日 15時00分更新
大公開時代の基本も「動」 表現の魅力を引き出す原動力
このように声に出す部分だけを考えても、プレゼンを動的にする要素は幅広い。さらに、それ以外の面でもプレゼンはもっと「動」になる。
まずは目線。会場内のあらゆる方向に視線を向けると、ひとりひとりが自分に対して語りかけられていると感じる。また、表情の変化も大切だ。話者自身が楽しそうに語っていれば聴衆も楽しく聞ける。笑うところでは笑い、真剣なところでは真剣に。無表情で語ると、話の内容も表情のない無味乾燥なものになってしまう。話者の表情が会場全体の雰囲気をリードするのだ。
そして身振り手振り。自分の前の空間をキャンバスにして、スライド画面と同様のものを空中に描き、それを指し示したり動かしたりして話の構図を表現する。スライドの中に動きを描き込まなくても、これで十分、動きを伝えることができるはずだ。
さらに話す位置も重要。講演用に用意された演台のうしろにとどまらずに、できるだけ移動する。舞台の上を右に左に、奥に手前に。会場の規模によっては、ステージだけでなく聴衆の席のある通路まで歩くのもいい。すると、声の聞こえてくる方向も変化し続けるから、人々は目や首を動かしてそれを追うことになる。そのうえ、話者の移動によって空気まで動く。これらによって、聴衆が受ける刺激が総合的に変化し、ダイナミックなプレゼンの「動」を五感でとらえることになるのだ。
また、スライド画面にも動的な工夫を盛り込む。情報を少しずつ提示するのだ。もし大量の情報が一度に表示されると、聴衆はそれを理解するほうに頭を使ってしまい、プレゼンの主体たる声を聞く意識が薄れてしまう。
(次ページに続く)
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