昨今、企業のメール環境の運用管理には大きな負荷がかかるようになってきた。こうした中、負荷を軽減しつつ、使い勝手を向上させた新世代のメールアウトソーシングサービスが注目を集めている。
メール環境の構築・運用はアウトソーシングが主流へ
企業のメール環境構築においては、自前でメールサーバを構築する方法と、ホスティング業者等のサービスを利用する方法の大きく2つがある。Exchange ServerやLotus Note/Dominoなどメールとグループウェアを組み合わせて利用している場合は、古くから自前で構築・運用している例が多い。一方で1990 年代後半からインターネットを導入した中小企業はホスティングを用いるのが一般的であった。
しかし、ブロードバンドの普及以降、自前での構築・運用は企業にとって大きな負荷になってきた。ウイルスメールやスパムメールが絶え間なく届き、エンドユーザーを恐怖に陥れる。また、送受信されるメールの流量自体が増大し、サーバにも大きな負荷をかける。さらに、法令遵守の観点からメールを検索可能な状態で保存するアーカイブ等のインフラが必要になっている。
こうしたさまざまな課題を満たすためのメールのアウトソーシングサービスも増えており、自前構築でないと実現できないことも少なくなっている。精度の高いセキュリティ機能や検索・アーカイブのサービスを提供するIIJの「IIJセキュアMXサービス」や、ハイパーボックスの「Mail Finder」などである。
Webブラウザ上でも高い操作性 feedpath Zebra
こうしたアウトソーシングサービスの選択肢として、今後注目したいのがやはりSaaS(Software as a Service)であろう。米ジンブラのオープンソースグループウェア「Zimbra」を日本語化した、フィードパスの「feedpath Zebra」もこうしたSaaSの1つだ。
他のメールアウトソーシングサービスとZebraで大きく異なるのが、Webメールをメインに据えている点だ。ご存じの通り、Webメールは古くからISPやポータルなどで提供されていたが、操作性が悪く、常用に耐えられなかった。たとえば、複数のメールをまとめて移動させるのにもチェックボックスをいちいち付けて、移動ボタンを押す必要があった。こうした点から、無料であっても、Webメールはメインになれず、あくまで「サブ」の存在にしか過ぎなかった。
これに対して、グーグルのGmailをはじめとする最新のWebメールサービスでは、ローカルで動作するメールクライアントと同様の操作性を実現する。feedpath ZebraがベースにしているZimbraももともとは「Outlookの操作感をWebブラウザ上で実現するため」に開発されたものである。Ajaxの技術をフル活用し、メールのドラッグ&ドロップでの移動や自動保存が可能で、レスポンスもきわめてよい。また、スケジュールやアドレス帳、共有ドキュメントなどの機能も提供されているので、Exchange Serverのようなコラボレーションも実現する。もちろん、ウイルスやスパムなどへの防御機能も備えており、管理者用の画面から確認できる。
さらに「Zimlet」と呼ばれる仕組みを用いることで、他社のWebサービスとの連携が容易に実現する。たとえば、日時の入ったテキストをマウスオーバーするとその日時のスケジュールをポップアップさせることが可能だ。その他、地図を呼び出したり、発注書番号をデータベースから引き出したり、WebサービスのAPIと組み合わせることでさまざまな連携が行なえる。
価格は初期費用あたり10万円で、フル機能を利用できる「Zimbra Black」が1ライセンスあたり2480円/月となっている。
昨年、米ジンブラはヤフーに買収され、今後は法人や学校関係のビジネスを強化していくという。また、Gmailと異なり、日本では住友商事を介してライセンス販売することも可能。実際に印刷会社最大手の大日本印刷は、2万7000人規模のNotesユーザーを、一気にZimbraに移行したという。