月刊アスキー 2008年2月号掲載記事
まるでアミューズメント施設のアトラクションのように見えるが、ここはれっきとした大学の図書館だ。
昨年9月にオープンした成蹊大学情報図書館には、こんな球体が吹き抜け部分に5つも浮かんでいる。なぜ図書館にこんなものが必要なのか。それは、これまでの常識を破る「喋れる図書館」を追求した結果なのだ。
本来、図書館は静粛が基本だが、これは「資料をすぐに取り出せる環境で話し合いたい」という、学び舎ならではのニーズと相反してしまう。しかし情報図書館では、これを「各ゾーンごとに出してよい音のレベルを規定」することによって静粛と会話を両立させている。
静粛度をゾーンで規定する
上記図の通り、飲食・通話・会話の可否がゾーンごとに決められており、たとえば個室と書架以外では会話のみならず通話まで許可されている。また、大学図書館は調べ物や試験勉強で毎日長時間滞在する者も多い。
情報図書館はこのような「長期滞在型」の最進化系といえる機能も実現している。1階には飲食スペースが設けられ、ここでは飲食・通話・会話すべてが自由となっている。さらに、書架の外周に沿って個室を用意(全266席)、各室にはLAN回線と空調を完備している。
そして冒頭で紹介した、施設中央に浮かぶ玉の正体は「プラネット」と呼ばれる予約制のミーティングスペース。図書を頻繁に利用するが、同時に議論も不可欠なゼミやグループ活動用に作られたもの。いわば「喋れる図書館」の象徴というわけだ。
図書館事務長の近藤茂氏は、「図書館の利用者が増えました。通常期間の利用率は40%増、講義がない期間の利用率は倍増です」。成蹊大学は図書館に玉を浮かせることで「静かに本を借りるだけの場所」から「本を媒介に議論を深める場所」に変えた。これはまた、多くの大学図書館が向かうべき方向を示しているといえるのではないだろうか。