ベネチア・ビエンナーレ国際建築展
2006年の9月初旬、イタリアはベネチアに飛んだ。第10回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展※1へ「SandScape※2」を出展するために。
※1 ベネチア・ビエンナーレは、イタリア北部の都市ベネチアで2年に1度開催される世界的な芸術祭。1895年に最初の美術展が開催されて以来、'07年が第52回となる。その発展の過程で国際音楽祭、国際映画祭、国際演劇祭などの独立部門を抱えるようになり、1980年に第1回が正式に開催された国際建築展は、美術祭が開催されない年に不定期に実施され、2006年が第10回目にあたる:http://www.labiennale.org/
※2 本連載の第7回で取り上げた「SandScape」は、砂を手で操りながら景観デザインを実現するシステム(参考記事)。光学的に半透明の特殊な砂とIR光源、IRカメラを用い、砂丘の高さにより透過する光の量が異なる性質を利用してその3次元形状を読み取る技術が取り入れられている。情報の構造が不確定な上流工程から、構造が明確化し、その細部を詰めるべき下流工程へのシームレスなデザイン支援システムを目指している:http://tangible.media.mit.edu/projects/sandscape/
初めて参加するベネチア・ビエンナーレだったが、その印象は鮮烈だった。
開催地が、ヨーロッパの中でも最も美しいと言われる水の都ベネチアであったこと、街中を張り巡らされた運河に陽光が反射し、風景がきらめいていたことなどもあるが、何よりそこで展開された未来都市のビジョンには深く考えさせられるものがあったのだ。
今回、我々タンジブル・メディア・グループのSandScape出展は、MIT都市計画学部の同僚カルロ・ラッティ博士率いるセンセアブル・シティー・グループとの共同展示。イタリア館の一部を借りて、大規模に展開することができた。
「リアル・タイム・ローマ※3」というテーマを掲げたラッティ博士のチームは、テレコム・イタリア社と協同して、ローマ市内における携帯電話の利用状況や、バス/タクシーに取り付けたGPSからの情報をリアルタイムに会場の大型スクリーンへと映し出した。ローマから約400km離れたベネチアの会場で、ワイヤレスコミュニケーションという新しい都市のランドスケープ(風景)を、今そこで起きているアクティビティーと重ね合わせて解釈する、新しい試みである。
※3 「リアル・タイム・ローマ」(Real Time Roma)についての詳細は、MITのセンセアブル・シティー・ラボ(SENSEable City Laboratory)のウェブページを参照のこと:http://senseable.mit.edu/realtimerome/
一方、タンジブル・メディア・グループは、以前この連載でも紹介したSandScapeを実際に体験できる状態で展示し、好評を博した(参考記事)。ベネチア・ビエンナーレの展示の多くが一方的に「見せる」グラフィカルなものなのに対して、我々のSandScapeは「触れる」インタラクティブな展示だ。そのため多くの来場者が立ち寄り、特に都市計画のプロの方々から好意的な評価を受けた。
(次ページに続く)
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