月刊アスキー 2007年10月号掲載記事
最近ではGPSを搭載した携帯電話が増えてきたが、衛星電波を使った位置推定は、建物が多い都市部では遮蔽や反射で電波を受信しにくく、誤差が大きい。そこで、街にあふれる無線LAN電波を、位置推定に使えないかと目をつけたのがクウジットだ。
クウジットは、末吉隆彦氏、塩野崎敦氏、暦本純一氏がソニーコンピュータサイエンス研究所にて推進してきた実験プロジェクトにソネットが出資して立ち上げたベンチャー企業。研究所時代から無線LANを使った位置測定の実験に取り組み、その成果をクウジット立ち上げにあわせてコンシューマ向けのサービス「PlaceEngine」としてスタートした。
PlaceEngineの仕組みは、
①無線LANアクセスポイントが発するビーコンを受信。
②信号に含まれる固有値や電波強度情報をデータベースと照合して位置を推測する
―というもの。無線LANアクセスポイントのデータベースは、アルバイトと研究員が都内中を歩き回って調べたものだという。
ウェブサービスとして公開した現在は、もし、ユーザーが現在地を推定できなかったり、間違った場所を示した場合に「ここですよ」と正しい位置情報をサーバに教える仕組みが取り入れられている。そのため、ユーザーが参加すればするほど、精度が向上するはずだ。
面白いのは、GPS電波の届かない屋内でも利用可能な点。ビルの何階にいるかはもちろん、どの会議室にいるかまで分かる可能性がある。
ウェブサービスやアプリケーションを構築できるAPIも一般へ公開されており、すでに「駅探ラボ」や「kizasiおでかけマップ」のようにPlaceEngineの機能と連携したサービスも登場している。
現在、ほとんどのモバイルノートには無線LAN機能が内蔵されているため、ユーザーにとってはGPSを追加する必要がない。地図サービスを提供している企業にとっても、アプリケーションを一部変更するだけで手軽に導入可能。ユーザーにとっても企業にとっても、位置情報サービスへの参加障壁を大幅に低下させたPlaceEngineは、次のビジネスの台風の目となるか!?