月刊アスキー 2007年10月号掲載記事
「デジタルペン」とは、ペンで書いた文字や図形を、そのまま画像データとしてパソコン等に取り込むことができるもの。
デジタルペンは2002年に登場し、ガジェット好きな人々の話題をさらった。これまでのデジタルペンの利用は、そのほとんどがパーソナルユースだった。こういった製品に対する感度の高い一部の人々に、〝高級なオモチャ〞として注目されていたとも言える。だがその一方で、デジタルペンを一般のビジネスの世界で活用しようという動きが、近年広がりつつある。
例えば学校。クラスの生徒全員がデジタルペンを持ち、テストの答案をこのペンで書いたとする。生徒が答案を書き終え、答案用紙上の「送信」と書かれたチェックボックスをチェックすると、答案の内容がサーバに送信されるので、教師はその場で答案を集計できる。ペンは時間の経過も記憶しているため、生徒が書いた漢字の書き順を、まるでビデオで撮影したかのように再生することも可能だ。プロジェクタで答案を投影し、生徒全員で眺めながら、それぞれが問題をどう解いたのかを比較するなど、授業をより面白く工夫することができるだろう。
これはNTTコムウェアが行った実証実験の例だが、他にも日立製作所や大日本印刷といった企業が、デジタルペンによる企業ソリューションの展開を進めている。すでに試験答案やアンケートの集計、外出先での見積書等の作成、医療機関でのカルテの電子化等での導入事例もある。
キーボードやタッチパッドといったいかにもデジタルな入力機器ではなく、ペンと紙という大昔からあるツールで情報をデジタル化でき、利用者側の習熟はほぼ必要ないことが、デジタルペンの最大のメリットだ。はたして、マニア向けのガジェットから、これまで使われていなかった分野にもITを浸透させていく強力なツールへと変貌を遂げるか?