月刊アスキー 2007年10月号掲載記事
半導体製品は、10個作っても10個すべてを出荷できるとは限らない。極めて微細な加工を行うために、製造時のちょっとした条件の違いやわずかなゴミの混入で、不良品が発生してしまうからだ。このため、半導体の歩留まり(良品率)は、製品によって3割、あるいは7割などと言われる。いずれにせよ、10個作っても最低数個は不良品が発生することになる。
この不良品を選別する装置が、半導体テスタだ。半導体産業はいま、米国や韓国、台湾等の海外企業が大きなシェアを持っているが、それら企業が採用する半導体テスタについては、日本企業が健闘している。そのなかでも世界シェアトップを誇るのが、アドバンテストだ。
同社は1971年に半導体テスタ市場に参入。その後経営面で紆余曲折はあったが、経営が苦しいときでも「売上げの約10%を常に研究開発へ投資してきた」(同社阪本公哉氏)。この研究開発重視の姿勢が、他に先んじて新しい技術を開発し続けることを可能とし、アドバンテストを世界シェアトップへと導いた。
そんな同社は近年、世界トップの地位を盤石にするために新たな手を打っている。キーワードは「標準化」と「オープン化」だ。
半導体テスタには、大きく分けてメモリ用と非メモリ用の2種類がある。メモリ用のテスタでは、同社は7割近いシェアを持っており、事実上の業界標準になっている。その一方、非メモリ用のテスタでは数年前まで、トップの企業にかなり水を空けられていた。
そこで同社は業界団体に参加し、非メモリ用のテスタのハードウェアやソフトウェアの仕様を業界で標準化して、サードパーティーにも規格を公開した。従来のテスタの場合、半導体の技術・世代が新しくなるごとに、テスタ自体も買い換える必要があった。だが、仕様が標準化・公開された同社のテスタ「T2000」の場合、ソフトウェアやモジュールの交換で新しい世代の半導体にも対応できる。サードパーティー製の安価なモジュール等も利用できることと相まって、コストの削減を図る半導体メーカーに歓迎され、非メモリ用テスタにおける同社のシェアは20%超にまで拡大している。
2007年度第1四半期の同社の業績は、昨年同期を下回った。また半導体メーカーが設備投資を抑制するという観測から、7月末にアドバンテストの株価は下落している。だが、JEITA(電子情報技術産業協会)は2008年の北京五輪に向けたテレビや家電の需要回復・拡大により、半導体テスタの市場も拡大すると予測。同社も第2四半期以降、業績・市況は回復すると予想している。