月刊アスキー 2007年9月号掲載記事
米国には「サッカーマム(ママ)」という言葉がある。子どもにサッカーを習わせようとする親のことだ。教育ママ(今ではもう死語となってしまったが)にも似た印象がある言葉だが、競争が激しい社会へ出るには、人一倍優れたスキルを早期から身につけて欲しいという親心がそこにはある(ちなみにサッカーをすると協調性がつくらしい)。
現在、ネット時代に必要なスキルは何だろう? その答えが、このボードゲームの中にある。
学研トイズが今年3月に発売開始した「こどもMBAシリーズ 経済ゲーム」は、飲食店のオーナーとなり、開始時に与えられる資産を増やすことが目的のボードゲームだ。食材を買い集め、メニューを増やすことで、プレイヤーは収入を得ることができるという、モノポリーを外食産業にアレンジしたような内容となっている。
食材を買う課程のなかで、重要となるのがゲーム内でのニュース。このゲームの必勝法は「バイオ燃料の生産増加」「使用禁止の農薬が検出される」と書かれたニュースカードを見ながら価格変動を先読みし、食材を安く仕入れるところにある。
ある情報から社会の変化を予想するのは、大人でも難しい。このゲームを監修した慶應義塾大学名誉教授の井関利明氏は、21世紀を生き抜いていくために「事態の変化や状況の移り変わりを知ってその時々に適切な対策を立てる力、相手や他者の出方を予想しながら自分の打つべき手を考え出す力」など、さまざまな「新しい能力」が必要だと言う。ちなみに、このシリーズの冠となっているMBAには一般的に言うマスター・オブ・ビジネス・アドミニストレーションの意味に加えて、マインド(豊かな心)、ブレーン(明敏な頭脳)、アクション(意思決定と行動力)を育むという想いが込められている。
子供向けのゲームにしては敷居が高そうに感じるが、対象年齢は9歳以上。「大人が小学生に負けてしまう事もあったりする」(学研トイズ)というほどで、ゲームとしての面白さもなかなかのもの。「このゲームで子供たちは実際のニュースにも興味示すようになる。すると親子のコミュニケーション機会も増える」(学研トイズ)という副次効果もある。
こどもMBAは、経済をテーマにした本作に続きシリーズ展開が予定されている。気になる次回作については、すでに取り組み中とのこと。「税金や政治をテーマにしたゲームも考えてみたい」と学研トイズ。10年後、どんな若者が社会に出てくるか? 今から楽しみで仕方がない。