iTunes Storeで販売されている、DRMフリーで従来より高音質な“iTunes Plus”。前編では周波数特性を計測して、通常の128kbpsよりiTunes Plusの256kbpsのほうがオリジナル音源に近いことを解説した。後編では、スピーカーやiPodで試聴してみる。
スピーカーを利用した試聴結果
スピーカーで聴いた結果だが、以下のようになった。
曲名 | 128kbps AACの印象 | 256kbps AACの印象 |
---|---|---|
Granuaile's Dance | 冒頭の高いシンセリードやフィドルの音が丸くなってしまう。右のアコギ?の音が前に出てこない。全体的に高域が詰まった印象だ。 | ほとんどWAVEファイルとの差が分からない。 |
Beyond the Sea |
ヴォーカルに艶がない。感動的な残響感が減っている。 | ほとんどWAVEファイルとの差が分からない。 |
Cello Suite #1 Prelude | チェロの倍音がなくなってしまう。残響も大幅に減る。心なしかダイナミクスも減って聞こえる。録音時の床をこする音なども聞こえなくなってしまう。 | 同じマスターではないかも知れないので、断定はできないが、WAVEファイルと比べて多少高域とダイナミクスが落ちる印象だ。弦をこすった音や倍音など、全体的に音質というよりはディテールに劣る印象である。 |
For You | ヴォーカルが多少引っ込んだ印象。右のトライアングルが多少こもり気味だが、WAVEとさほど変わらず許容範囲。 | WAVEとさほど変わらない。多少アコギのニュアンスが違うくらいか。 |
タイム・リミット | ヴォーカルが多少引っ込んで聞こえる。それ以外はWAVEと変わらない。 | WAVEとほとんど変わらない。 |
Donna Lee | 全体的に多少こもった印象。特に右のライドシンバルがくすんだ音色に変わってしまっている。ハイハットがつぶれてしまい、ビートがわかりにくくなっている。 | 多少ライドシンバルの高域が失われているが、許容範囲。 |
総じて128kbpsと256kbpsの差は大きく、256kbpsとWAVEの差は小さい。
ここで、チェロ独奏に関して一言補足しておく。iTunes Storeではこのアルバムが「1995年の発売」になっているが、筆者が所有しているのは同アルバムの「2004年度版」である。特に明記されていないが、聴いた印象では「再マスタリングされている可能性」が非常に高い。この場合ソースに含まれているもともとの情報が異なるため、当然256kbpsとCDからリッピングしたWAVEファイルの音質差は顕著になる。WAVEの方がずっと素晴らしいサウンドに聞こえることもある。クラシックCDの場合、得てして“サイレントリマスタリング”されていることが多いので、注意が必要だ。
(次ページに続く)