このページの本文へ

両社のアライアンス担当が語るサービス連携の意義

メリットしかないLINE WORKSとkintoneの連携 入力や通知がもっと便利になる

2024年05月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: LINE WORKS

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 中小企業での利用が多いLINE WORKSとサイボウズのkintoneの連携が高い注目を集めている。両者のサービスが連携するとなにができるのか? そもそもどうやって連携するのか? 今後のパートナーシップの方向性は? LINE WORKSの荒井琢氏とサイボウズの筆前直輝氏で語り合ってもらった。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

サービス頭文字であるLとKで決める荒井氏と筆前氏

LINE WORKSとkintoneは競合ではないですよ

大谷:今回はLINE WORKSとkintoneのサービス連携についてお話を聞きたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。

筆前:サイボウズ株式会社のアライアンスビジネス開発部という部門で、ソリューション連携を担当しています。kintoneを中心にした当社製品と他社製品との連携、共同のプロモーションやマーケティングも展開しています。充実してきたエコシステムをきちんとビジネスに変えるべく、営業組織との連携を意識した活動を進めています。

サイボウズ 営業本部アライアンスビジネス開発部 部長 筆前直輝氏

荒井:LINE WORKS株式会社のアライアンス担当です。ほぼ筆前さんといっしょで、LINE WORKSが用意したAPIを活用してもらい、他社製品との連携を進めています。kintoneのような業務ソフトのベンダーだけではなく、ボット開発ツールベンダーやモバイルデバイス管理、シングルサインオンなど付加価値を提供するツールのメーカーとの連携も多いです。

大谷:そもそもの話なんですけど、LINE WORKSとkintoneって、グループウェアというカテゴリだと競合になるんじゃないですか?

荒井:LINE WORKSはビジネスチャットの顔が強く前面に出ていますが、カレンダーやドライブなどグループウェアとしての側面も持っています。そのため機能的にサイボウズOfficeなどとかぶるところがあるのは確かです。

でも、実際のLINE WORKSを営業する場面で、グループウェアとして提案したり、リプレースしましょうという活動はほぼしていません。というのも、LINE WORKSへのお客さまやパートナーの期待は、グループウェアというより、コミュニケーションツールとしての役割だからです。どちらかというとkintoneとも連携できるということを、最近のアピールポイントの1つにしていますし、LINE WORKSはすでにkintoneを使っているお客さまにも導入できるものだと思っています。

筆前:そもそもの製品の立ち位置が全然違いますね。kintoneはノーコードで業務アプリケーションを開発できる基盤として、DXや内製化を支援していくという位置付け。一方で、LINE WORKSは使い慣れたLINEライクなユーザーインターフェイスを用いて、情報を発信したり、現場から情報を吸い上げたり、リアルタイムにコミュニケーションができるツールという位置付けです。LINE WORKSはkintoneのようなデータベースとしての役割が求められているわけではないと思うんです。

大谷:kintoneって、データベース、ワークフロー、コミュニケーションが統合されているという言い方をされますが、コミュニケーションの部分は他社製品で補うのもアリということですかね。

筆前:はい。すべてのケースにおいてkintoneでのコミュニケーションが合っているわけではないので、普段使っているコミュニケーションツールでリアルタイムにやりとりをしてもらい、ストックすべきデータをkintoneに蓄積していくのがよいと思います。

連携でできることは「カスタマイズされた通知」と「シンプルなデータ入力」

大谷:実際に連携するとなにができるのでしょうか? また、どのように連携するのでしょうか?

荒井:LINE WORKSとkintoneの連携で実現できる機能とは、大きく「通知」と「入力」があります。kintoneの更新をLINE WORKSに通知したり、LINE WORKSからkintoneにデータを入力することが可能になります。

LINE WORKS ソリューションアライアンス部 部長 荒井琢氏

具体的には、たとえばM-SOLUTIONSさんの「Smart at message」を使ってもらうと、kintoneのレコードが更新されたときにLINE WORKSの指定グループのトークに通知が届きます。必要に応じて、通知内容の本文やタイトルをカスタマイズしたり、添付ファイルの転送も可能です。

大谷:これらの設定や利用は、簡単にできるのでしょうか?

荒井:LINE WORKSとkintoneを連携する場合は、Smart at messageだけでなく、ジョイゾーさんの「Joboco」やGlobalBさんの「LITONE for チャットボット」など、サードパーティのプラグインを使ってもらうことになります。

入力に関してはデータを受け付けるBotが必要になるのですが、両製品ともAPIを意識することなく、ノーコードで設計できます。やはり連携するときだけコードを書かなければという話になると、kintoneの世界観から外れることになりますから。

大谷:なるほど。今までLINE WORKSとkintoneとの連携ってどんな感じだったのでしょうか?

荒井:昨年、LINE WORKSもサイボウズのアライアンスプログラムに参加させてもらいました。これはわれわれにとっても戦略的な取り組みでした。以前から、両方使ってくれているお客さまが多いというのも肌感覚でわかっていましたし、ジョイゾーさん以外にも両者を連携させるサードパーティ製品が追従してきました。

大谷:確かにジョイゾーさんのJobocoとかって、以前からサービスとしてはあったし、LINE WORKSもAPIは以前から提供していましたよね。

荒井:でも、今まではジョイゾーさんやGlobalBさんのようなパートナーさまによるサードパーティの連携サービス任せの連携でした。筆前さんとは以前から仲良くしていますけど、メーカー同士でシェイクハンドしている感じじゃなかったんです。

筆前:パートナープログラムに加盟してもらわないと、Cybozu Daysにブースを出してもらえないし、Webのプロモーションにも名前を出せない。両社の連携をオフィシャルにプロモーションすることもできない。だからLINE WORKSさんとの関係も、担当レベル同士の付き合いから、会社同士の付き合いにレベルを上げることにしました。

荒井:LINE WORKSがアライアンスプログラムに加入した背景には、サイボウズの製品とLINE WORKSの両方を販売しているパートナーや連携させるサードパーティサービスが増えたというのが大きいです。プログラムに参加することで両者に共通する販売パートナーも活動しやすくなりますしね。

大谷:まさに潮目が変わったのが、昨年だったんですね。

荒井:昨年末から今年2月までの3ヶ月間、弊社の顧客のみを集客対象にした「kintoneユーザーさま必見!LINE WORKSとkintoneを繋いでみよう」というセミナーをやりました。そうしたら、過去開催した連携系のセミナーでもっとも参加者が多かったんです。それくらいLINE WORKSユーザーの中でもkintoneを使っているユーザーが多かったということです。

LINE WORKSがフロントエンドになり、kintoneにデータを溜めやすくなる

大谷:LINE WORKSから見たサービス連携の意義はなんですか?

荒井:LINE WORKSは業務で利活用できるビジネスチャットではあるのですが、プラットフォームとして企業が使っているさまざまなアプリケーションのフロントエンドにもなれると思っています。その理由の一つは、いたってシンプルなユーザーインターフェイスだからです。

LINE WORKSを使っている企業であれば、多くの社員は業務アプリの中でもスマホとの相性が良いLINE WORKSを一番使ってくれていると思います。であれば、業務アプリも、一番触るLINE WORKSから簡単にデータを入力したいだろうし、通知も受けたいと思うはず。kintoneのアプリの使い勝手はこれからもどんどん上がるのでしょうが、LINE WORKSを使っている限り、フロントエンドはわれわれが担ったほうがよいと考えています。

筆前:地方の中小企業の社長も「うちはIT得意じゃないから~」と言いつつ、手元でLINEは使っていますからね(笑)。「kintoneアプリを覚えてください」はハードル高いですが、LINE WORKSであればLINEを使う程度の操作ができれば、スマホから簡単にデータが入れられます。これが重要です。

荒井:もちろん、kintoneがカバーしている業務アプリの部分までLINE WORKSがやらないのか?という質問は来るのですが、餅は餅屋だと思っています。企業はそれぞれのビジネスで、それぞれの業務アプリを使っていますが、そのフロントエンドはLINE WORKSがまとめて担えると思います。

LINE WORKSのユーザーは中堅中小企業が多いですが、中でもやはりペーパーレスやExcelの課題に直面しているお客さまは多いんです。データの蓄積や加工にはkintoneの方がベストなケースが多々あります。だから、われわれから直接提案するわけではなくても、連携できるkintoneの名前は営業現場で出しますね。

大谷:逆にサイボウズから見たサービス連携の意義はなんでしょうか?

筆前:kintoneってノーコードで業務アプリが作れるので、さまざまな業務データが溜まっていくデータベースとなります。データを活用して、業務改善を行なったり、ビジネス価値を出していくのがゴールなのですが、データって溜まってなんぼの世界なんです。そのためにわれわれはkintoneへのデータ入力そのもののハードルを極限まで下げたいと思っています。

また、kintoneユーザーの中には、たとえば建設や介護の現場で働く、いわゆるノンデスクワーカーがいます。ノンデスクワーカーは、わざわざkintoneアプリを立ち上げて、画面から入力するという体験があまり適していません。でも、LINE WORKSであれば、まさにLINE感覚で入力すればkintoneにデータが入っていくので、現場のビジネスデータが吸い上げやすくなりデジタル化の波にノンデスクワーカーを取り残すことなく乗せていくことができます。kintone単体ではカバーしづらかったこうした現場隅々における業務改善のラストワンマイルをつなぐ連携サービスとして期待しています。

連携の認知を拡大したユーザー事例とは

大谷:具体的な活用例を教えてください。

荒井:昨年のCybozu Daysで紹介された青森の長谷川鉄工さまの事例がわかりやすいです。もともと建設業なので、現場で作業する人が多いのですが、ドキュメントや日報を作成するために会社に戻る必要がありました。そこで、長谷川鉄工さんはGlobalBさんのLITONE forチャットボット を用いて、kintoneの項目に従ってデータを入力できるチャットボットを作成しました。日付や作業内容をLINE WORKのトーク画面上で聞いてくれるので、チャットボットと会話のラリーをしていると、あっという間に日報ができるんです。

筆前:長谷川鉄工さまはkintoneからExcelに帳票出力もしています。自治体への提出義務がある作業報告がかなりあるのですが、今までは事務所に戻ってデジカメから写真を取り込み、Excel上で定型フォーマットに内容を記入して、写真を挿入してサイズ調整など行って提出していたのですが、kintoneにデータをまとめることで出力も容易になりました(関連記事:kintoneがつなぐDXのラストワンマイル 牛舎でも、工場でも、屋外でも)。

荒井:実はこの事例がインパクトはかなり大きくて、LINE WORKSとkintoneで連携できるという認知を拡げてくれました。当日は、私たちもCybozu Daysに出展していましたが、ブースにお客さまがドッと訪れました。

大谷:なるほど。Cybozu Daysで発表された事例で連携自体を知ったという人が大半だったんですね。やはりLINE WORKSとkintoneを両方使っている企業って多いということですね。

荒井:そうなんです。それなのに、LINE WORKSとkintoneが連携できるということ自体が知られていない。「kintoneからの通知をLINE WORKSで受け取ったり、LINE WORKSからkintoneに入力できるんですよ」と説明すると、「それはすごくいいね」という反応が戻ってきます。

もう1社紹介したいのは、関西クリアセンターさまの事例ですね(関連記事:LINE WORKSとkintoneの連携で業務改善 とある産廃業者の挑戦がすごかった)。こちらはチャットボットではなく、LINE WORKS上にミニアプリを構築できるWOFF(Works Frontend Framework)という仕組みを使っています。自前のミニアプリからkintoneへデータ入力できる仕組みをLINE WORKSに実装してくれました。今後はこのWOFFの活用がkintoneユーザーさまの中でも増えてくることを願っております。

大谷:WOFFでの実装は、既存のチャットボットとどこが違うんですか?

荒井:チャットボットだと、質問が来て、回答してという会話のラリーが発生するので、項目が多いとやや面倒です。その点、WOFFを使えば、LINE WORKSのトークからkintoneの入力画面を立ち上げているがごとく、データを入力できます。まさにkintoneのユーザーインターフェイスの一つとしてLINE WORKSが活用できる世界観です。

ノンデスクワーカーにLINE WORKS×kintoneを訴求していく

大谷:現在は、通知と入力がメインですが、今後LINE WORKSとkintone連携はどのようになっていくのでしょうか?

荒井:kintoneのフロントエンドをLINE WORKSで担っていくという利用例は少しずつ増やしていきたいので、WOFFを扱えるパートナーも強化していきたいです。

あと、先日ジョイゾーさんと検証したのは、生成AIとの連携です。たとえば、LINE WORKSからJobocoに向かって話しかけると、話しかけた内容が生成AIによってきれいにkintoneににレコードとして登録されるというものです。生成AIの力で登録されるテキストの質が担保できるようになるので、入力のハードルを下げていけると思います。

筆前:ビジネス面では、デジタル化のメリットがまだまだ享受できていないノンデスクワーカーの方や2024年問題などの解決策の一つとして使ってもらいたいです。その上で、kintoneに現場のビジネスデータを溜めて、正しいビジネスジャッジにつなげられる基盤作りをご支援していきたいですね。

5月28日に開催される「LINE WORKS DAY 24」にもサイボウズ登壇!

5月28日(火)に原宿で開催されるLINE WORKSの未来を語るビジネスカンファレンス「LINE WORKS DAY 24」のプログラムにおいて、サイボウズ栗山氏による国内DX状況の今と今後の可能性について特別講演が予定されている。詳細・申込みはこちら。エントリー締め切りは5月21日(火)まで!

■関連サイト

カテゴリートップへ