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スタートアップ事業戦略の攻めと守りを知財から知る

「宮崎のスタートアップのリアル~攻めと守りの事業戦略」イベントレポート

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

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パネルディスカッション「攻めと守りの事業戦略の構築について」

 パネルディスカッションには、パネリストとして押谷昌宗氏に加え、株式会社ベルコード代表取締役 大西将也氏、特許庁 総務部企画調査課知的財産活用企画調整官 清野千秋氏、モデレーターとして株式会社ゼロワンブースター 杉田剛氏が参加。公開知財相談会の形式で、大西氏から専門家へ知財活動の悩みを相談した。

 株式会社ベルコードは、健やかな空間をつくり出す特許取得のヒートシート「空間サプリAROPO」を開発販売するスタートアップ。香りは気分の向上や虫よけ、消臭などの効果がありとても万能だが、既存のアロマデフューザーは電気や火、水を使用し、旅行・出張時に持ち運びづらい、都度メンテナンスなどの手間がかかる。 同社の開発したヒートシートは、電気や火、水を使わない名刺サイズで軽くて超コンパクトなデフューザーで、アロマオイルを数滴たらすと自然発熱で香りを拡散する。素材には活性炭や鉄粉を使用しており、使用後、脱臭シートとしても利用可能だ。 現在、昨年12月に東京ビックサイト出展したところ、大手企業や中小企業の引き合いも多数あり、協業も国内外で数社決定し、それぞれ事業展開に向けて進んでいる。また、国内の店舗販売の協業については、協業企業の直営店約100店舗で販売する方針で進んでいる。

 知財活動としては、2019年にアイデアを発案し、2020年に国内で特許と商標を出願。2021年には工場を設立して販売を開始し、特許と商標を海外出願している。翌2022年には米国、カナダ、イギリスのAmazonでテスト販売を開始。現在は日本、米国、カナダ、韓国、中国、台湾の6カ国で特許を取得、商標は30カ国以上登録済みだそう。

 今後は、High/Middle/Low/ IPビジネス向けにプロダクトを分け、対応するターゲット層の販路を持つ企業と協業して特許取得国へと展開していく計画だ。 現在、コーヒー1杯感覚で使用できるプロダクト(サプリ感覚でシーンにマッチした空間を低価格帯で提供)を開発しており、4月前半には完成予定で、最初はホテルのアメニティーなど(ホテル様募集中)を中心に協業企業等と活動し、その後、Highブランドの香りとのコラボやコンビニなどでも「空間サプリ」として協業を展開していきたいとのこと。また、海外へリソースのある企業や投資家との協業も募集している。

株式会社ベルコード代表取締役 大西将也氏

 最初の質問は、「PCT出願期間の30カ月間にどのように出願先を決めるか」。大西氏の場合は、市場調査を依頼すると時間も費用もかかるため、自分で各国の人口などからデータ分析して優先順位で決めたという。

 清野氏は、「市場調査が理想だが、シードやアーリー段階は、米国、欧州、アジアなど市場がありそうなところを選んでいるのが現実」と答えた。押谷氏は、「ECでの販売程度であれば市場調査のニーズは高くない。売上が伸びた段階で本格的に調査するといい」とアドバイスした。また令和6年度からはさらに支援を拡充し、「海外権利化支援事業」を実施予定だ。中小企業、スタートアップ、大学を対象に、海外出願時の翻訳費用の2分の1を補助が受けられるとした。

特許庁 総務部企画調査課知的財産活用企画調整官 清野千秋氏

 次の質問は、「VCは知財の価値評価をどのようにしているのか」。押谷氏は、「価値評価の基準はまだ確立されていない。知財は無形資産のため、誰が使うかによって価値が変わってくる。他者の評価よりも、自分たちが持っているからこそビジネスができる、と説明することでバリュエーションを上げていくのが現実的」と回答。清野氏は、「特許を持っていると、少なくともその技術に関しては独占的に使える権利があることから、投資につながるケースは十分ありうる。直接的な金額で表すのは難しいが、スタートアップが自社技術の強みをアピールするツールとして活用できる」と答えた。

 

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