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ASCII Power Review 第210回

精細でありながら柔らかいライカ描写は健在です

フルサイズ6030万画素の最高級コンパクトカメラ「ライカQ3」実機レビュー

2023年06月26日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 ライカからレンズ一体型のフルサイズ機「ライカQ3」が発売された。2015年に登場した初代「ライカQ」は約2400万画素だったが、2019年の「ライカQ2」では約4730万画素に、そして「ライカQ3」では約6030万画素と着実に高解像化してきた。果たして最新モデルの画質や撮り心地はどんなものか、趣味と実益を兼ね試用させてもらった。

ライカストア・ライカオンラインストア価格は90万2000円。なお前モデル「ライカQ2」は現在82万5000円なので価格差は7万7000円だ。

ライカQ2から進化したボタン配置に
USB Type-CとHDMIも新たに搭載

 まずは外観から。正面からの見た目は初代から変わらないスクエアなデザイン。スペックでみるとサイズや重量が少しだけ増加しているが、その差は感じるほどではない。

 手にすると金属の重厚な質感が伝わり、まるで工芸品のような気品の高さはライカならではである。

ボディーサイズは130×80.3×92.6mmで重量はバッテリー込みで743g。前モデル「ライカQ2」は130×80×91.9mmで718gだったので、ほとんど同サイズ

 上面のボタンやダイヤル類の配置は「ライカQ2」と同じだが、シャッターボタンはクラシカルなネジ穴のあるタイプに変更された。ただこのネジ穴はアクセサリーのレリーズボタンを装着するもので、昔ながらのレリーズケーブルは使えない。

シャッターボタン周りは電源スイッチを兼ねていて、右肩ダイヤル(名称サムホイール)の中央は「Fn」ボタンになっている。

昔を懐かしみ30年以上前に買ったレリーズボタンを付けてみた。なお純正のレリーズボタン(1万450円~1万1000円)も「ライカQ3」と同時に発売されている。

 グリップが無いフラットなボディーだが、構えてみると背面の窪みに親指がいい感じで収まりホールド感は良い。

 さらなるホールド感を求める人にはサムレスト(3万4100円~3万6300円)やワイヤレス充電が可能なハンドグリップ(グリップ2万8600円、チャージャー2万6400円)がアクセサリーとして用意されている。

背面の窪みは絶妙な形状で、すんなり指が収まり構えやすい。

 背面の操作ボタンは配置が変更された。先代までは背面液晶左側に並んでいたMENUやPLAYボタンは右側十字キーの上下に移動。Fn専用のボタンはなくなったが、かわりにシャッターボタン後方の小さな丸ボタンが2つに増えた。

初代から徐々にボタンは少なくなり、シンプルな操作になった。シャッターボタン後方の丸ボタンは初期設定では左がデジタルズーム、右には動画/静止画切換が割り当てられている。もちろんカスタマイズで変更可能だ。

シャッターボタン後方の丸ボタンは突起幅が異なっていて指先の感覚で判別できる。気の利いた造りだ。

 背面液晶は上下に可動するチルト式に変更された。タッチ操作は撮影時のピントやシャッター、再生時の画像送り拡大縮小は可能だが、前モデルと同様に一部のメニュー画面ではタッチできない。メニュー操作は少しクセがあるので、将来的には改善して欲しいポイントだ。

背面液晶は可動式になり、解像度も184万3200ドットに向上している。

「MENU」ボタンを押すと各種撮影設定が表示され、この画面ではタッチ操作が可能。

さらに「MENU」ボタンを押すと細かいメニュー設定に移行するが、この画面ではタッチ操作はできない。

 バッテリーとメディアのスロットがある底面は様々な刻印が施されている。底面を見て美しいと思えるカメラはライカくらいだろう。

底面右がバッテリー、左がメディアのスロット、左端にはハンドグリップのワイヤレス充電の接点が新設された。

 バッテリーは容量がアップした「BP-SCL6」に変更し、公称撮影枚数は約350枚である。実際に撮ってみてもRAW+JPEGで269カット計538枚の撮影ができた。なお従来バッテリーの利用は推奨されない。

バッテリーの着脱は前モデル同様にレバー&プッシュ式で、変わらず心地よい操作感。

 メディアはUHS-Ⅱ対応SDのシングルスロットと変わらずで、「ライカM11」のような内蔵メモリーは搭載されていない。

底面のメディアスロット。防塵防滴のためパッキンが施されている。

 「ライカQ2」ではなかった端子が追加されHDMIとUSBのType-Cが搭載された。Type-Cは充電にくわえ9V/3A(27W)以上のUSB出力なら給電にも対応する。

側面にはHDMI(TypeD)とUSB3.1Gen2のタイプCを搭載。

フルサイズ6030万画素で解像度UP
精細でありながら柔らかいライカ描写は健在

 撮像素子は6030万画素(9520x6336ドット)にアップしたが、JPEGはもちろんRAWでも3650万画素(7404x4928ドット)と1860万画素(5288x3518ドット)にサイズダウンして記録することができる。データサイズを節約したいときや連写には有効だが、階調や高感度など画質に違いはないので、余裕があるなら最大解像度で撮影がオススメだ。

RAWの解像度も3段階から変更が可能。JPEGとは別の設定になるのでRAW+JPEG撮影時にRAWを3650万画素でJPEGは6030万画素といった設定もできる。

 画像をクロップするデジタルズームも90mm相当の望遠撮影が可能になり(「ライカQ」は50mm相当。「ライカQ2」は75mm相当)、これも画素数がアップしたことによる恩恵だ。デジタルズーム時の画角はM型ライカのようにブライトフレームが表示される。ライブビューなので拡大表示も可能なはずだが、実用性よりマニアックな撮影体験を優先するあたりもライカらしい。

デジタルズームによる画角の比較。解像度はクロップ無しの28mmで9520x6336ドット、35mmで7616×5072ドット、50mmは5328×3552ドット、75mmは3552×2368ドット、90mmは2960×1968ドットになる。RAWではクロップ無しの画像が記録される。

35mm(7616×5072ドット)

50mm(5328×3552ドット)

75mm(3552×2368ドット)

90mm(2960×1968ドット)

表示されるブライトフレームの違い。90mm相当だと流石に小さいが、M型ライカに憧れた世代としてはコレもまたよし。

 搭載レンズは初代から変わらず「ライカ ズミルックスF1.7/28mm ASPH」で、絞りリングや距離目盛と被写界深度の表示があるピントリングなどアナログ操作感が非常に嬉しいデザインだ。

 最短撮影距離は通常時で30cm、「マクロ」に切り替えると開放F値はF2.8になるが17cmの近接撮影が可能となる。

アナログな操作感とマクロに切り替えると距離表示が変わるギミックがたまらない。

 気になる画質だが、高画素だけあって解像感は非常に高い。とはいえシャープを強調しすぎず、精細でありながら柔らかい描写がライカらしくて好印象だ。

 明るい開放F値を活かした立体感のあるボケも魅力。JPEG(画質仕上スタンダード)と同時撮影したRAWと比べると、幅広い明暗の階調再現や深みのある発色などの調整が施され、ライカの考える絵作りが伝わってくる。

遠景でも手前のボケのおかげで立体感のある写真に。絞りF2・シャッタースピード1/2000秒・ISO50・ホワイトバランスオート。

最小絞りF16で撮影したが回折の画質低下もそれほど気にならない。絞りF16・シャッタースピード1/1600秒・ISO50・ホワイトバランスオート。

シンメトリーな景色を撮影してみても歪みはなく気持ちいい。絞りF5.6・シャッタースピード1/60秒・ISO400・ホワイトバランスオート。

複雑な都市の情景を撮影。拡大してみると解像感の高さがわかる。絞りF5.6 ・シャッタースピード1/160秒・ISO50・ホワイトバランスオート。

メリハリのあるコントラストと色乗りのよい発色が印象的。絞りF2.8・シャッタースピード1/8000秒・ISO800・ホワイトバランスオート。

絞り開放でも周辺の光量低下や像の乱れはごくわずか。絞りF1.7・シャッタースピード1/3200秒・ISO50・ホワイトバランスオート。

夕暮れの街中を絞り開放でスナップ。絞りF1.7・シャッタースピード1/4000秒・ISO400・ホワイトバランスオート。

日差しの強い状況でも明暗差が幅広く再現されている。絞りF2.8・シャッタースピード1/1000秒・ISO50・ホワイトバランスオート。

何気ない街中もボケ味で雰囲気のある写真に。絞りF1.7・シャッタースピード1/50秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

通常時でも30センチまで寄れるので、これくらいアップで撮影できる。絞りF1.7・シャッタースピード1/80秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

マクロで近接撮影してみた。拡大してみるとピントのシャープ感がスゴい。絞りF2.8・シャッタースピード1/640秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

 高感度はISO6400を超えたあたりからノイズを感じるが、他の6000万画素クラスの機種と同等のレベル。2万5000程度までは実用的な画質だ。最高感度は従来モデルの5万から10万にアップした。

 従来機では設定できなかったJPEGのノイズリダクションが低/中/高の3段階(初期設定は低)から選べるようになった。ただ完全にノイズ処理をオフにはできないので、ノイズより解像感を重視するならRAWから調整するといいだろう。

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