宥恕期間もいよいよ年末終了! 電帳法対応で増える業務は自動化が必須

ずばり自動化すべき業務とは? 3ヶ月で間に合う電帳法対応

文●大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ユーザックシステム

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ユーザックシステムはコクヨと共催している電子帳簿保存法(以下、電帳法)対応セミナーの第3弾を開催した。宥恕期間の期限が年末に迫り、いよいよ待ったなしの電帳法対応。電帳法の最新動向に加え、業務の負荷につながらないようにする自動化をどう進めるか、RPA製品を手がけるユーザックシステムの渡辺大輔氏が説明した。

ユーザックシステム RPAカスタマーサクセス部 渡辺 大輔氏

電帳法対応をきっかけにテレワークや業務の効率化を

 コクヨとユーザックシステムの提案は電帳法対応の業務を「受ける」と「送る」で整理し、自動化と効率化を図るというもの。受ける側ではユーザックシステムのRPA「Autoジョブ名人」「Autoメール名人」を用いて基幹システムとの連携を自動化し、送る側ではコクヨの帳簿Web配信サービス「@Tovas(アットトバス)」を用いて電帳法要件を満たしつつ取引書類を送付できるというものだ。ここではユーザックシステムのRPAによる電帳法業務の自動化について紹介する(関連記事:待ったなしの電子取引の電帳法改正対応 クラウドサービスとRPAで乗り切れ)。

 改正された電帳法では、2022年1月1日以降の電子取引に関して、紙の保存が禁止され、電子での保存が義務づけられる。しかし、2022年12月16日に発表された「令和5年度税制改正大綱」では、対応が義務とされていた電子取引において、予想以上に企業の対応が遅かったという現実があり、いくつかの要件緩和が行なわれている。

 たとえば、電子取引で必要とされていた検索機能に関しては、税務調査の際、電子で受け取った国税関係の書類(請求書など)をデータでダウンロードし、提出できるようにしてあれば、すべての検索機能は不要となった。ただし、売上高5000万円以下の企業だ。

 また、電帳法対応の期限についても、対応が間に合わなかった相当の理由が所轄の税務署から認められた場合は、猶予措置として「保存要件にかかわらず、電子で受け取った国税関係書類を保存できる」という措置が行なわれる。こちらも税務調査の際に該当データを提出しなければならない。また、相当な理由の具体的な内容はまだわかっておらず、事業規模も指定されていない。

 2022年1月に施行済みの改正電帳法の宥恕措置については予定通り2023年12月31日で終了になる。前述した令和5年度税制改正大綱に則った事情の考慮は行なわれるが、売上高5000万円以下に該当しない企業は基本的に対応を継続しないといけないという。渡辺氏は、「今回の電帳法改正の目的は、単純な税務署の都合のみならず、日本として生産性を上げるためのデジタル化の推進。これを機にテレワークや業務の効率化を進めていきましょう」とアピールした。

電帳法対応で増える業務をRPAで自動化

 今回の電帳法の改正では、紙の電子保存やスキャナ保存をしやすくするための要件の緩和とともに、電子取引においては紙の保存が不可となり、データの保存が必須となる。ここで言う電子取引とは、流通BMSやWebEDI、ネットバンキングなどを介したEDI取引のほか、電子メールやファイル転送による取引、また経費精算システム、電子契約、ECサイトなど、インターネットを介した経費の支払いや購買、その他データを扱うFAXの取引も該当する。「取引の手段を問わず、金額が載っているモノはすべて対象になる」(渡辺氏)

 電子取引の保存に際しては、以前より要件が強化されており、真実性の要件と可視性の要件を満たす必要がある。真実性の要件はデータの改善や削除ができず、確認できること、そしてFAXやPDFなど取引先情報にタイムスタンプを付けることなどが挙げられる。これらはJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)認証のシステムに保存すれば、満たすことができるという。

 一方の可視性の要件は、税務署の求めに応じ、取引日付や取引先、金額を検索できる必要がある。検索は範囲指定での検索できること、2つ以上の任意の項目を組み合わせた条件で検索できることが必要になる。

 前述した通り、こうした電帳法への対応はデジタル化を伴うため、業務効率化のチャンスになると渡辺氏は指摘する。デジタル化には、システム導入の検討や運用の試行錯誤、現場全体の浸透などを伴うため、今回の改正を通じて効率化・自動化を進めていくことが重要になる。「期限もあるので、現場が混乱することがないよう、早めの準備が肝要。そして、せっかくやるのであれば、業務の負担を軽減していくように考えていただきたい」と渡辺氏は語る。

 普通に考えれば、電帳法対応で現場の作業は増えてしまう。そのため保管の作業で活用したいのがRPAによる自動化だ。人手で作業すると手間もかかるし、ミスも増える。APIやプログラムを開発すると高価になりがちで、一度作ってしまうと変更も大変。これに対してRPAによる自動化はスモールスタートが可能で、業務変更への対応も容易だ。

RPAによる自動化はスモールスタート可能

2ヶ月の導入はどうやって実現したのか? ダイワボウ情報システムの例

 ユーザックシステムでは、すでに電子メールによる取引の自動化が事例化されているという。今回フォーカスされたのは、電帳法に対応した請求書の処理をAutoメール名人で自動化したダイワボウ情報システム(DIS)の事例だ。

 ダイワボウ情報システムは電帳法対応において、メールで送付されてくる請求書の処理に課題を抱えていた。仕入れ先からの請求書送付は、メール添付やダウンロードURL、パスワード付きなどさまざまな形で送られてくる。ユーザックシステムのAutoメール名人では、これらの請求書のメールを受け取り、請求書を開封し、電帳法対応のルールに則って保存するところまで自動化している。

 サービスインまではたった2ヶ月だった。まずは準備と担当者をアサインし、自動化のための業務の棚卸しを行なった。そもそもどんなメールをどのように受信しているのか洗い出し、パターン名を付けた。その上で、取引先(メールドメイン)ごとに対象ファイルと受信パターンを記入し、リスト化を行なった。これにより、どの帳票タイプから自動化を着手するのか優先順位を付けることができるようになった。

 実際のシナリオ作成に関しては、ユーザックシステムの「電帳法パックのサクセスプラン」を採用し、自動化の方法や開発、テストまで2ヶ月で実現できた。また、請求書の送付は取引先や社内との調整も必要になるため、取引先には請求書送付のメールアドレスを自動化可能なアドレスに変更することを通知しつつ、社内においては関係者への説明、FAQ準備、案内作成や告知、重複交渉仕入れ先の対応調整などを行なったという。

 苦労した部分もあった。取引先が数百社ととにかく多いため、メールの洗い出しが大変だったことのほか、単純にパターン化できないイレギュラーケースもあった。また、メールの振り分けでエラーが起こり、シナリオがうまく動かないという例もあったという。「はじめからすべて完璧に動くのは難しい。いろいろな取引先や条件があるので、そこを想定し、不具合をつぶしていく。でも、チャレンジをしなければ、成功はない」と渡辺氏は語る。

「手作業でがんばってほしい」の声には、棚卸しと投資対効果を

 では、RPAで自動化すべき業務とはどこか? 渡辺氏はずばり「検索要件を満たすために、『取引先』『取引年月日』『金額』を登録する作業」だという。

 一言で取引のための書類と言っても、書類は見積書、納品書、請求書、契約書など多岐に渡る。検索可能な所定のファイル名にリネームし、所定のフォルダにファイルを保存したり、ファイル名や検索用のExcelファイルに情報を登録したり、取引先情報や契約の進捗も逐一更新する手間は、まさに電帳法対応のためだけに増える作業だ。渡辺氏はこの作業をRPAでゼロにしようと提案する。「既存の業務でいっぱいいっぱいなのに、こんなのやってられるかという現場の声も挙がりますよね。ここを自動化しようと提案です」(渡辺氏)。

 もちろん、RPA導入にはコストもかかるので、「自動化ではなく手作業でがんばってほしい」という上司のリクエストもあるかもしれない。これに対して、渡辺氏は「自動化は必要」と主張する。人手不足の現場にさらに負荷がかかるし、手作業だとどうしてもミスが出てしまうので、顧客や取引先の満足度にも影響する。

 そのため、まずは電帳法対応業務の棚卸しをすべきだという。対応しなければならない取引先の数、そしてその業務にかかるであろう時間などを棚卸しすれば、自動化の投資効果はおのずと見えてくると言う。ユーザックシステムの電帳法パックでは棚卸しシートも用意しているので、必要に合わせて活用できる。

自動化の効果をデモで披露

 最後、渡辺氏はAutoメール名人とAutoジョブ名人のデモ動画を紹介する。前者のAutoメール名人では、まずメールを受信し、対象メールを開き、添付されたPDFファイル(発注書)文書を保存するまでの流れを披露。フロー図に沿って作業が自動的に行なわれ、ファイルの保存やルールに則ったファイル名の変更までも可能になっている。

Autoメール名人でのPDF保存までの流れ

 また、Autoジョブ名人ではInfomartのB2Bプラットフォームで取引データをダウンロードするデモだ。保存先を特定してスクリプトを実行すると、Infomartのログインページを開き、指定されたID・パスワードでログインする。ダウンロードページでは、まず日付を条件に検索をかけ、ダウンロード依頼ボタンをクリックすると、必要なファイルがリストされるので、これらを1つずつダウンロードしていく。データがなかった場合は、当然処理を行なわない。人手では面倒な繰り返し作業を、あたかも人が操作を行なっているように行なえるのがRPAのメリットだ。

 前述した通り、ユーザックシステムでは「電帳法対応パック サクセスプラン」というサポートプランを用意している。電帳法対応業務を手作業に頼らず、RPAを活用して効率化させるというソリューションだ。

電帳法対応パック サクセスプラン

 ダイワボウ情報システムの事例でも活用されていたが、まずは電帳法対応業務の棚卸しを行ない、自動化シナリオの進行スケジュールを立て、実際にシナリオを開発し、テストを実施。本稼働後に出てきた課題解決まで支援し、おおむね3ヶ月で電帳法対応の業務自動化が間に合うという。「何社も支援してきた実績やノウハウを元に、おおむね3ヶ月でサービスインできるようにサポートさせてもらっています」と渡辺氏はアピールした。

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